「ん〜、消化不良だな〜」 「ははっ、そうだね」 ラストの終わり方に納得していない佐久間とそんな佐久間を見て笑う俺。 只今、午前11時42分。 佐久間も映画好きなのかなぁ。 腕組んで、凄い考えてる。 「飯、どこ行く？」 よかった、お昼も一緒だ。 流石に、映画だけ見てバイバイはないか。 「んー、俺、この辺あんまり知らないんだよね」 「じゃ、俺がよく行くとこでいい？」 佐久間の行きつけ…。 「うん、そこでいい！」 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「こんちわー」 「こ、こんにちわ」 「いらっしゃーい」 連れてこられたらのは、お好み焼き屋さん。 行きつけだけあって、女性の店員さんは、佐久間を見ると"あぁ！"という感じでお出迎え。 「ほい、メニュー」 「あ、ありがとう」 慣れた様子で席につく佐久間とそれに続く俺。 「佐久間は何にする？」 「俺は、ミックスの大」 「じゃー俺は、もち明太子チーズにする」 「すいませーん」 「はーい」 「ミックスの大1つともち明太子チーズ1つ、以上でお願いします」 「ミックス大1ともち明太チーズ1ね」 注文をとった店員さんが厨房の方へ下がっていった。 お昼時だけあって、結構混んできたなぁ。 お店は、何だか昭和な雰囲気。 オシャレな佐久間…と俺は勝手に思いこんでいるけど…だから、もっと今風な所に行くのかと思ってた。 「またキョロキョロしてんな」 「う、うん。こういうレトロな所、あんま来たことないから」 へー、漫画とかもいっぱい置いてある。 「確かに、今どきの店ではないな」 と佐久間が言うと、 「悪かったな、今どきの"ばえー"な店じゃなくて」 奥から出てきたイケメン店員さんが、話しかけてきた。 「悪いとは言ってない」 「言ってるも同然の言い方だったろ」 「……」 イケメン店員さんと、仲良さげに話す佐久間。 …俺の知らない佐久間。 「それにしても、オマエには珍しいダチ連れてきたな」 イケメン店員さんに、マジマジと見られる俺。 ゔぅ、そんな見ないでぇー。 「ど、どうも。は、はじめましてデス」 と、とりあえず、挨拶だ。 「あ、こちらこそはじめまして。サクがいつもお世話になっております」 一転、笑顔で返してくれた店員さん。 ん？少し、佐久間に似てる？ 「何、オマエが言ってんだよ」 「"オマエ"って…図体がデカくなったからって、態度もデカくなりやがって。子どもの頃は、あんなに可愛いかったのになぁ〜」 「いつの話してんだよ」 悪態をつく佐久間に、嘘泣きでおどけるイケメン店員さん。 距離感が近いというか…。 「えーっと、店員さんは…」 「あ、俺？俺は、ここのオーナーで、コイツの叔父さん」 「オジサン？」 「俺の母親の弟」 「ねーちゃんとはひとまわり以上離れてるから、サクの叔父さんと言うよりお兄さんかな」 てへっと笑いながら言う佐久間の叔父さん。 その顔も、何処となく佐久間に似ている。 「何調子にのって言ってんだ。オッサンだ、オッサン」 なかなか冷たい態度の佐久間。 でも、このお店によく来てるってことは、叔父さんのことが好きなんだと思う。 「それより、忙しい時間だろ。早く厨房戻れよ」 ほら、その顔。 なんだかんだ言いつつ、結局ほっとけないときにする顔。 「へいへい。じゃ、えーっと…」 あ、紹介がまだだった！ 「み、三島藤です」 「藤君ね。ゆっくり食べってって」 「あ、ハイッ！」 ヒラヒラと手を振って厨房へ戻っていった、佐久間の叔父さん。 「叔父さんと仲がいいんだ」 「仲よくねーよ」 またまた、そんな顔して。 「キョロキョロの次はヘラヘラか」 「へへっ」 いつもの佐久間にホッとする。 「それにしても、あの映画、俺には理解しがたい」 ハハ、やっぱり気になってたんだ、あの映画。 「何なんだ、あのラスト。藤は、分かるのか？面白かったか？」 佐久間、ちょー真剣。 「俺は、面白かったよ。中盤のコミカルな展開がラストと繋がって、悪くなかったかな」 「んー」 まだ考えてる佐久間。 なんか、可愛い。 「へへっ」 「オイ、藤。俺が映画理解できねーからって笑うなよ」 じとーっと俺の方を見る佐久間。 「違うよ！ああいう映画を一緒に観に行ってくれる友達いなかったし、まさか、その後も見た映画の話しができるとか思わなかったから…。なんか嬉しくて」 「俺が面白くないって言ってもか？」 「うん！だって、映画の感想なんて人それぞれだし。評価の高い映画でも、自分には合わないときとかあるし」 「そっか」 優しく笑う佐久間。 なんか、ほっこり。 「はーい、ミックス大と」 「ありがとうございまーす」 「もち明太チーズでーす」 「あ、ありがとうございます」 店員さんからお好み焼きのタネをもらって、早速焼き始める。 その間も、佐久間は映画の話。 ホント、楽しい！ と、そろそろひっくり返してもいいかなぁ。 「なぁ、藤」 「んー、なにー？」 焼き具合を気にしつつ佐久間を見ると、じっとこっちを見て、にっこりひと言。 「藤が頼んだやつ、一口ちょーだい」 ぐっ……。 だ、誰かO型の人、い、いませんかぁ…。 た、直ちに、輸血を、お、お願いしますぅ…。