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2-S
「ん〜、消化不良だな〜」
「ははっ、そうだね」
ラストの終わり方に納得のいかない俺ととそんな俺を見て笑う藤。
只今、午前11時42分。
藤は、毎回こんな映画みてるのか。何気に、頭いいしな。
ってか昼飯の後どうすっかなー。
「飯、どこ行く?」
とりあえず、昼飯だな。
「んー、俺、この辺あんまり知らないんだよね」
「じゃ、俺がよく行くとこでいい?」
若干面倒くさい所だが。
「うん、そこでいい!」
また、凄い勢いで頷くが…。
藤、もしかして、そのマフラーはむち打ち用か?
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「こんちわー」
「こ、こんにちわ」
「いらっしゃーい」
良かった。まだ混んでねーな。
「ほい、メニュー」
「あ、ありがとう」
藤、そんな真剣に見なくても、お好み焼きのメニューは大体どこも一緒だろ。
「佐久間は何にする?」
「俺は、ミックスの大」
「じゃー俺は、もち明太子チーズにする」
また、可愛い顔でニコニコしやがって。
「すいませーん」
「はーい」
「ミックスの大1つともち明太子チーズ1つ、以上でお願いします」
「ミックス大1ともち明太チーズ1ね」
注文をとった三木さんが厨房の方へ下がっていった。
あーやっぱ混んできたなぁ。結構人気だからなぁ…、って藤、
「またキョロキョロしてんな」
「う、うん。こういうレトロな所、あんま来たことないから」
レトロって…。
藤、オマエは優しいな。
「確かに、今どきの店ではないな」
まぁ、そこがいいんだけど。
「悪かったな、今どきの"ばえー"な店じゃなくて」
あぁー、面倒くせーのが出てきた。
「悪いとは言ってない」
「言ってるも同然の言い方だったろ」
「……」
「それにしても、オマエには珍しいダチ連れてきたな」
オイ、あんまジロジロ見んな。
藤の可愛いさが減る。
「ど、どうも。は、はじめましてデス」
ほら、藤が困ってんだろ。
「あ、こちらこそはじめまして。サクがいつもお世話になっております」
オイ!
「何、オマエが言ってんだよ」
「"オマエ"って…図体がデカくなったからって、態度もデカくなりやがって。子どもの頃は、あんなに可愛いかったのになぁ〜」
「いつの話してんだよ」
しかも、毎回するよな、その話。
「えーっと、店員さんは…」
「あ、俺?俺は、ここのオーナーで、コイツの叔父さん」
「オジサン?」
ナニ格好つけて"オーナー"とか言ってんだ。
この店の雰囲気だと、"大将"がいいとこだろ。
「俺の母親の弟」
「ねーちゃんとはひとまわり以上離れてるから、サクの叔父さんと言うよりお兄さんかな」
何だその"てへっ"は、ちっとも可愛くねーし。
藤、オマエもなお兄の"てへっ"にやられてんじゃねーよ。
「何調子にのって言ってんだ。オッサンだ、オッサン」
なお兄、イケメンだからって、マジ調子のりすぎ。
「それより、忙しい時間だろ。早く厨房戻れよ」
他のスタッフが困るだろ。
ってか、藤との時間が減って俺が困る。
「へいへい。じゃ、えーっと…」
「み、三島藤です」
「藤君ね。ゆっくり食べってって」
「あ、ハイッ!」
藤、なお兄にそんな顔するな。
「叔父さんと仲がいいんだ」
「仲よくねーよ」
そういう顔は俺だけにしろ。
「キョロキョロの次はヘラヘラか」
「へへっ」
全く、こっちはハラハラだよ。
「それにしても、あの映画、俺には理解しがたい」
そうそう、それより映画の話だ。
「何なんだ、あのラスト。藤は、分かるのか?面白かったか?」
「俺は、面白かったよ。中盤のコミカルな展開がラストと繋がって、悪くなかったかな」
「んー」
あれを面白いと言える藤は、やっぱガチの映画オタクだな。
「へへっ」
だから、その可愛い顔はするなって。
「オイ、藤。俺が映画理解できねーからって笑うなよ」
「違うよ!ああいう映画を一緒に観に行ってくれる友達いなかったし、まさか、その後も見た映画の話しができるとか思わなかったから…。なんか嬉しくて」
「俺が面白くないって言ってもか?」
「うん!だって、映画の感想なんて人それぞれだし。評価の高い映画でも、自分には合わないときとかあるし」
オマエがそんなに嬉しいなら、いつでも一緒に映画を観にいくし、いくらでも映画の話をしよう。
「そっか」
優しく笑っている藤。
あぁ、この感じ好きだなぁ。
「はーい、ミックス大と」
「ありがとうございまーす」
「もち明太チーズでーす」
「あ、ありがとうございます」
三木さんからお好み焼きのタネをもらって、早速焼き始める。
その間も、映画の話をする。
ホント、嬉しそうな顔するな……、そうだ。
「なぁ、藤」
「んー、なにー?」
焼き具合を気にしている藤と目が合う。じっと見つめて、にっこりひと言。
「藤が頼んだやつ、一口ちょーだい」
できれば、藤から"はい、あーん"って言って欲しいなぁ。
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