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2-S

「ん〜、消化不良だな〜」 「ははっ、そうだね」 ラストの終わり方に納得のいかない俺ととそんな俺を見て笑う藤。 只今、午前11時42分。 藤は、毎回こんな映画みてるのか。何気に、頭いいしな。 ってか昼飯の後どうすっかなー。 「飯、どこ行く?」 とりあえず、昼飯だな。 「んー、俺、この辺あんまり知らないんだよね」 「じゃ、俺がよく行くとこでいい?」 若干面倒くさい所だが。 「うん、そこでいい!」 また、凄い勢いで頷くが…。 藤、もしかして、そのマフラーはむち打ち用か? ***************** 「こんちわー」 「こ、こんにちわ」 「いらっしゃーい」 良かった。まだ混んでねーな。 「ほい、メニュー」 「あ、ありがとう」 藤、そんな真剣に見なくても、お好み焼きのメニューは大体どこも一緒だろ。 「佐久間は何にする?」 「俺は、ミックスの大」 「じゃー俺は、もち明太子チーズにする」 また、可愛い顔でニコニコしやがって。 「すいませーん」 「はーい」 「ミックスの大1つともち明太子チーズ1つ、以上でお願いします」 「ミックス大1ともち明太チーズ1ね」 注文をとった三木さんが厨房の方へ下がっていった。 あーやっぱ混んできたなぁ。結構人気だからなぁ…、って藤、 「またキョロキョロしてんな」 「う、うん。こういうレトロな所、あんま来たことないから」 レトロって…。 藤、オマエは優しいな。 「確かに、今どきの店ではないな」 まぁ、そこがいいんだけど。 「悪かったな、今どきの"ばえー"な店じゃなくて」 あぁー、面倒くせーのが出てきた。 「悪いとは言ってない」 「言ってるも同然の言い方だったろ」 「……」 「それにしても、オマエには珍しいダチ連れてきたな」 オイ、あんまジロジロ見んな。 藤の可愛いさが減る。 「ど、どうも。は、はじめましてデス」 ほら、藤が困ってんだろ。 「あ、こちらこそはじめまして。サクがいつもお世話になっております」 オイ! 「何、オマエが言ってんだよ」 「"オマエ"って…図体がデカくなったからって、態度もデカくなりやがって。子どもの頃は、あんなに可愛いかったのになぁ〜」 「いつの話してんだよ」 しかも、毎回するよな、その話。 「えーっと、店員さんは…」 「あ、俺?俺は、ここのオーナーで、コイツの叔父さん」 「オジサン?」 ナニ格好つけて"オーナー"とか言ってんだ。 この店の雰囲気だと、"大将"がいいとこだろ。 「俺の母親の弟」 「ねーちゃんとはひとまわり以上離れてるから、サクの叔父さんと言うよりお兄さんかな」 何だその"てへっ"は、ちっとも可愛くねーし。 藤、オマエもなお兄の"てへっ"にやられてんじゃねーよ。 「何調子にのって言ってんだ。オッサンだ、オッサン」 なお兄、イケメンだからって、マジ調子のりすぎ。 「それより、忙しい時間だろ。早く厨房戻れよ」 他のスタッフが困るだろ。 ってか、藤との時間が減って俺が困る。 「へいへい。じゃ、えーっと…」 「み、三島藤です」 「藤君ね。ゆっくり食べってって」 「あ、ハイッ!」 藤、なお兄にそんな顔するな。 「叔父さんと仲がいいんだ」 「仲よくねーよ」 そういう顔は俺だけにしろ。 「キョロキョロの次はヘラヘラか」 「へへっ」 全く、こっちはハラハラだよ。 「それにしても、あの映画、俺には理解しがたい」 そうそう、それより映画の話だ。 「何なんだ、あのラスト。藤は、分かるのか?面白かったか?」 「俺は、面白かったよ。中盤のコミカルな展開がラストと繋がって、悪くなかったかな」 「んー」 あれを面白いと言える藤は、やっぱガチの映画オタクだな。 「へへっ」 だから、その可愛い顔はするなって。 「オイ、藤。俺が映画理解できねーからって笑うなよ」 「違うよ!ああいう映画を一緒に観に行ってくれる友達いなかったし、まさか、その後も見た映画の話しができるとか思わなかったから…。なんか嬉しくて」 「俺が面白くないって言ってもか?」 「うん!だって、映画の感想なんて人それぞれだし。評価の高い映画でも、自分には合わないときとかあるし」 オマエがそんなに嬉しいなら、いつでも一緒に映画を観にいくし、いくらでも映画の話をしよう。 「そっか」 優しく笑っている藤。 あぁ、この感じ好きだなぁ。 「はーい、ミックス大と」 「ありがとうございまーす」 「もち明太チーズでーす」 「あ、ありがとうございます」 三木さんからお好み焼きのタネをもらって、早速焼き始める。 その間も、映画の話をする。 ホント、嬉しそうな顔するな……、そうだ。 「なぁ、藤」 「んー、なにー?」 焼き具合を気にしている藤と目が合う。じっと見つめて、にっこりひと言。 「藤が頼んだやつ、一口ちょーだい」 できれば、藤から"はい、あーん"って言って欲しいなぁ。

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