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4-S
「俺、参考書みたいから」
「おっけー」
「えっ?」
学習書籍のある方を指して言う俺と了解した吉川、そして戸惑っている藤。
只今、午後1時16分。
さっきまでの心地よい時間が嘘のようだ。……うん、無理だわ。
「じゃあ、買い終わったら参考書のとこいくな。行こ、みっちゃん」
「う、うん」
吉川の後をついて、児童書籍の方へ向かった藤。
あーあ、本当だったら、俺が藤と一緒になっちゃんのプレゼント選んでたんだよなぁ。
かと言って、3人でみても、結局吉川に藤を独占されるんだろうな。
平日ならまだしも、休日もか!
考えただけでイライラするが、それを目の前でされたら…ブチ切れる!
大体、藤も吉川には気を許しすぎだ。
確かに、あんな爽やかを絵に描いたような王子に仲良くされたら、嬉しいだろうけど。
しかも、なっちゃんと1個違いの妹がいるとか。それだけで、話のネタが増えるだろ。
あ"ー、腹立つ!
マジ、数学の参考書でもみて、心を落ち着かせるしかねー。
どこだ!数IIの参考書は!!
イライラしながら学習書籍についた俺。
目当ての参考書を探していると、目の端に何か入る。
見ると、背伸びをして一番上の棚の参考書を取ろうとしてるようだ。
ん、コイツ…届かねーのか?
「なー」
「え、は、はい?」
…若干、藤に似てる?
「お前が取ろうとしてるの、コレ?」
「え、あ、そ、それです」
キョドり方も似てるか。
……やべぇ、藤の事考えすぎて、全体的に藤に見えてきた。
「はい」
「…あ、ありがとうございます」
敬語じゃねーけど、藤もこんな感じで言うよなぁ。
「どういたしまして」
キミのおかげで、やさぐれた気持ちが少し落ち着いたよ。
「佐久間!!」
ん、藤?
「モリー!」
今、名前で呼ばなかったか?
吉川がいるんだぞ。
「買い終わったか?」
何か表情が固い。
朝の挙動不審な感じとも違う。
「うん。モリーのアドバイスのおかげで良いプレゼントが買えたわ。なーみっちゃん!」
「……」
「みっちゃん?」
「三島?」
「あ、うん。なっちゃんが喜びそうなの買えた」
やっぱり藤の様子がおかしい。
笑ってはいるが、何かが違う。
「あ、あのー…」
「ん?」
まだいたのかキミ。
「…コレ」
えーっと…。
「アメ?」
「参考書取ってもらったので…」
「…お礼ってこと?」
そう言うとコクコクと頷いた。
「ハハッ!律儀だな。ありがと」
参考書取っただけで、アメ玉って。
「モリー、行こう」
「じゃあ、受験頑張れよ」
「は、ハイっ!」
ホント、藤に似てるわ。
「モリーって何気に紳士だよなぁ」
「何気には余計だ」
俺の会計を終え、本屋を出たのだが…。
その間、声を発しなかった藤。
やっぱり気になる…。
「なぁ、みし」
「それじゃあ、目的の物も買えたし、何か飲んでひと息入れますか?」
「はぁ?吉川、何言って」
「まあまあ。折角なんだから、いいだろ?みっちゃんもちょっと疲れてるし。ね?」
「あ、うん」
「少し休も?」
「…うん」
何も聞かずに、藤に声をかける吉川。
「俺さ、スタ◯新作飲みたかったんだよね」
誰に言う訳でもなく、大きな独り言を言う吉川は、藤と、いつもと違う、程よい距離感を保っている。
「でも高校生には、なかなか高い飲み物んだからなー」
吉川、オマエの方がよっぽどスマートだよ。
俺は、どうしても問い詰めてしまう。
逃げ場をなくて、追い詰める。
困った顔の理由を知りたいから。
悲しい顔の理由を知りたいから。
いや、違う。
本当は、自分の不安を消したいからだ。
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