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4-F
「俺、参考書みたいから」
「おっけー」
「えっ?」
学習書籍のある方を指して言う佐久間と了解したヨッシー、そして戸惑う俺。
只今、午後1時16分。
さっきまで楽しかったのになぁ…。
何か、急に遠くなったなぁ…。
「じゃあ、買い終わったら参考書のとこいくな。行こ、みっちゃん」
「う、うん」
ヨッシーの後をついて、児童書籍の方へ向かう。
「モリーとみっちゃんって、ホント仲いいね」
パラパラと本を見ながら言うヨッシー。
「そ、そうかなぁ…」
そう見えるなら嬉しいけど、今はどうなんだろ…。
「モリーが羨ましい」
「え?」
「俺もみっちゃんと仲良くなりたいなー」
こっちを向いて笑顔で言うヨッシー。
え、だけど…、
「もう仲良くなってる、よ、ね?」
「んー、俺もモリーみたいに、もっとみっちゃんと仲良くなりたいなーと思って」
「んー?」
どういうことですか、ヨッシー?
「はは、何その顔!」
俺の顔見て笑うヨッシー。
し、失礼だなー!
「分かんなくていいよ!そういう所が好きだから」
ふふーんと、ハミングしながら本探しを再開したヨッシー。
さらっと"好き"って言えるヨッシーは凄いなぁ。
「良い本買えたね!モリーのおかげだな」
「うん!」
会計を済ませ、佐久間のいる参考書籍の方へ向かうと…。
「ーーーーー」
「ーーー」
佐久間が誰かと話している。
「はい」
「…あ、ありがとうございます」
ここから見える佐久間は、俺の知ってる佐久間、だけど…。
「どういたしまして」
その笑顔 は、俺だけが知ってればいい!
「佐久間!!」
佐久間と話してた子がこっちを向いた。
「モリー!」
その子と目が合う。
「買い終わったか?」
その表情 を、俺は知っている。
「うん。モリーのアドバイスのおかげで良いプレゼントが買えたわ。なー、みっちゃん!」
「……」
「みっちゃん?」
「三島?」
「あ、うん。なっちゃんが喜びそうなの買えた」
……俺も同じだから。
「あ、あのー…」
「ん?」
佐久間、…ダメだよ。
「…コレ」
「アメ?」
…そんな表情 したらダメだよ。
「参考書取ってもらったので…」
「…お礼ってこと?」
……って、もう遅いか。
「ハハッ!律儀だな。ありがと」
君の顔は、誰かに恋したときの顔。
「モリー、行こう」
「じゃあ、受験頑張れよ」
「は、ハイっ!」
……佐久間に恋した顔だ。
「モリーって何気に紳士だよなぁ」
「何気には余計だ」
あの子に見せた、佐久間の顔がちらつく。
「なぁ、みし」
「それじゃあ、目的の物も買えたし、何か飲んでひと息入れますか?」
「はぁ?吉川、何言って」
「まあまあ。折角なんだから、いいだろ?みっちゃんもちょっと疲れてるし。ね?」
「あ、うん」
「少し休も?」
「…うん」
ありがと、ヨッシー。
「俺さ、スタ◯新作飲みたかったんだよね」
誰に言う訳でもなく、大きな独り言を言うヨッシーは、きっと俺に気を使ってくれてるんだよね。
「でも高校生には、なかなか高い飲み物だからなー」
こっちを見ている佐久間。
ヨッシーを隠み蓑に、佐久間から見えないようにする俺。
今の俺の顔、佐久間には見せられない。
朝の変な顔の方がまだマシだ。
今の俺の顔は、きっと、醜いから。
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