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第3話

昨日は帰るだけで済んだけど、学校で話し掛けられるのは嫌だな。 詞空が好きな奴に睨まれる。大半は女子だけど。 学校に行くのが憂鬱で、今日は行くのを辞めようかと思った。 でも、詞空に問い詰められる未来が見える。 ……詞空は、如何して僕と関わるんだろ。面白い事も話せない。特技がある訳でもない。 取り柄もない僕と一緒に居て、彼にメリットが有るとは思えない。 僕は大きな溜め息を吐きながら、正門を潜る。遠くで歓声が聞こえた。 またかと思いつつ、関わらない様に教室に向かう。どうせ、詞空絡みだろうし。 すっかり先輩からも好かれた詞空は、学校中の人気者。 僕はあんな人混みの中に居たら吐きそうになるから普段は近付かない。 教室に入り、窓際の一番後ろに座る。 この学校は、窓際の方から名前順に座る事になっている。 僕は苗字が蒼樹だから前の方になるのかと思いきや、あ行から始まる生徒が結構居た。 相川、相澤、藍田、青井、そして蒼樹。正直運が良いと思う。 詞空とも席離れてるし、休み時間は沢山のクラスメイトに囲まれてるし。 詞空本人が迷惑そうな、面倒そうな表情をしているのには気付いてるけど。 多分猫かぶってるんだろうなぁ。詞空って気に入った人以外は傍に置きたくなさそうだし。 でもこれ、詞空の前では口が裂けても言えないな。面倒事は避けたい。 ……ほんと、詞空が僕を避けてくれればなぁ。 頭が変に重い。何かが乗っかっている様な……不思議に思って顔を上げると、ドアップで詞空の整った顔が現れた。 「っ!?」 突然の事で思いっきり椅子ごと後退した。そんな僕の様子を見て詞空は柔らかく笑った。 「おはよ。ずっと寝てたけど、若しかして寝不足?」 目を細めながら微笑を浮かべる彼は、認めたくないけど絵になっている。 僕は詞空と話したくなくて、また机に突っ伏した。 「さっきの先生の話、聴いてた?覚えてないなら俺が教えようか」 「……良い」 断ると、詞空は黙り込んだ。また闇のオーラを発動させないか心配だったが、いかんせん他の生徒の視線が痛い。 何彼奴、的な目で見られてる。絶対詞空の所為だ。 僕が恨みの込もった視線を送ると、詞空はそれに気づいた様で、苦笑いを浮かべる。 「やっぱ視線、気になるよな」 表情は穏やかなのに、声には一切の感情が込もっていなかった。 きっと詞空が一番辛いんだろうなぁ。だからって知ったこっちゃないけど。 また眠くなって来たので、自分の腕に顔を押し付けた。 性懲りも無く詞空の手が僕の頭を撫でるから、払ってやった。 「……双葉、俺に冷たいよね」 何を今更。 「僕は興味の無い人間には冷たいよ」 そんな興味の無い人間に愛して欲しいなんて、口が裂けても言えないけど。 本音なんて、簡単には語れない。本心を晒け出すのが恐い。 いくら気の置けない詞空相手でも、無理と思っちゃうんだからさ。

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