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第7話
空夢が射精し終えると、くたりとする身体を優しく抱き上げ、奄美はベットルームへと向かった。
まだ互いに治まらない身体を貪る様に重ねた。空夢だけで無く奄美自身も、アイスドロップに当てられていたのだ。
何度も挑む内に身体だけでは無く次第に空夢の口も緩まり、ファクトリーへ忍び込んだ理由も引き出せた。
怪盗を始めた切っ掛けは、奄美の予想通り空夢の借金だった。だがこの借金自体が、ライバルメーカーの陰謀なのだろう。空夢は踊らされ捨て駒の様に送り込まれたのだ。
アイスドロップは、菓子メーカーだけで扱える代物では無い。裏を取り世間に暴露されれば、カンパニー自体が崩れてしまう。
ハロウィンは各菓子メーカーにとって一大事業なのだ。通常運転だけでは利益を得る事は、近年難しいのが事実である。夢の様なお祭り騒ぎのハッピーハロウィンには、黒い影も付き物となってきている。
そう……アイスドロップは確かに菓子には間違いない。だが、子供のためではなく大人専用の菓子なのだ。一夜を夢の世界へと誘う媚薬。ドラッグの様な幻覚や薬物依存は起きないが、菓子にしては危うい劇薬だ。
高値で取引されるのも、一部の富裕層に流れるのも、裏で糸を引く組織が絡んでいる。そう言った背景で奄美の昇進も保留とされてしまった訳なのだ。
菓子で人を幸せにと奄美は夢を抱いて入社した。地位のためとは言え、黒い事に手を染めるなど予想もしていなかった。だが、こうして空夢と出逢えた事は嬉しい誤算だった。
奄美は隣で眠る空夢を引き寄せると、これからライバルメーカーにどう挑み、空夢をどうやって手に入れるか思考すると、瞼を閉じ空夢の唇にそっと唇を重ねた。
◇◇
「……ダメだな」
「えっ……? 今、何て言いましたか?」
「ダメと言ったんだ」
「──ど、どっ、何処の辺りです?」
「全部だ」
「全部!?」
「やり直せ」
「そ、そんな……時間が……」
「なら、寝ないでやれ」
「ちょっと横暴じゃないですか!?」
「何処がだ。下らない事にかまけてる暇はあって、仕事は出来ないだと? お前の方が俺を困らせているだろ。気付いていないと思ってるのか? 十月三十一日、お前は何をしようとしている?」
「それは、その……って! 勝手に覗きましたね!?」
「ふんッ、勝手も糞もあるか」
「侵害です! そうやって、あんたは……ストーカーですか?」
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