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チョコアイスにお願い ②フユト
じゃれ合う2人を見た瞬間、頭に血がのぼった。
「楽しそうですね」
俺の声に振向いた顔は赤くて
その原因をつくったであろう男に軽い憎しみを覚えた。
無邪気にチョコアイスの話しをするヤツにも。
「お、お前もひとつ食う?」
ーーバカ……俺の食いたいのは……。
理不尽な怒りの的にされたナツキは背後でニヤニヤ笑って俺を見る。
きっとすべて分かったうえでの笑みだとこっちも分かるから余計に腹も立つ。
何も分かってない男を間に挟んでしばらく笑顔で睨み合った後
ナツキはヒラヒラと手を振って立ち去った。
「叶うのは俺の恋だけどな」
あっそう……。
もう何回一緒に飯食ったっけな?
親同士も親友で共働きだったから
数え切れないくらい一緒に過ごしたよな、俺たち。
どんな女といるより楽しいって思ってたのは俺だけか?
無邪気に喋り続ける親友は
俺の不機嫌の訳なんてこれっぽっちも
分かってないようだ。
どうでもいい女にいい寄られるより
お前のバカ話し聞いてるほうがよっぽどいいよ。
「俺はな。……俺は
ーーお前以外のヤツにモテてもうっとおしいだけなんだよ!!
って言ったらどんな表情 するんだろ。
まあ……言う気ないけどさ。
腹いっぱい食べた帰り道。
季節は確実に夏から秋に変わっていく。
それを告げる甘い匂いを感じながら歩いた。
俺の左側をほんの半歩遅れて歩く癖。
話し出すとき目を眇める癖。
「俺が先に当たり引いたからすねてんの?」
って……見当外れもいいとこ。
全く何にも分かってないとこが憎らしくてでもそれ以上に可愛くて
今ここで、左手を少しずらしたら触れてしまえる手。
なのに
「あっ、コンビニ寄ってっていい?」
なんて嬉しそうに笑うから
「……どーぞー」
親友の顔で答える。
ハート型のチョコアイス?
そんなもんに一ミリだって興味ないよ?
ただ、そのレアなチョコアイスを一緒に見たのが俺じゃないってのが腹立つだけ。
嬉しそうな顔を俺以外の野郎に見せたのが
最強、最悪にムカついただけ。
ショーケースに並ぶチョコアイスを見た俺は
舌うちしながらもそれをカゴに投げ入れた。
もちろん親友が見てない隙に。
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