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友達よりもっと フユト&ハル
Side フユト
「おい!」
咄嗟に掴んだ手が思ってた以上に冷たくて思わず強く握り締めていた。
「こんなとこで何してる?なんで中に入らない?」
「そう思ったんだけど、なんか、ここで待っていたくて。ごめん」
ごめんってなぁ…あぁちくしょう
「ごめんって言うなよ」
可愛すぎて心臓ズキュンきた事バレないよように尖った声で言うと
「ごめん」とまた返ってくる。
「お前なー、ごめん以外言えないわけ?」
「んな事ないけど…」
「ないけど?」
「……」
「ないけど?何?」
「フユトさー、カッコイイよな」
はっ?!!!ば、ば、ば、ば、ばっかだぁぁぁぁぁ!!!こ、こ、こいつはホントに超絶馬鹿野郎だぁぁぁ!或いは天然の…天然の歩く人タラシ野郎だ。
「何当たり前の事今更言ってんの?お前」
「うん、そうだね」
凍えそ裏な顔して笑うからもうたまらなくなって掴んだ手ごと引き寄せて抱きしめる。
「フユト?」
「……」
「フユトぉぉ!!見てる!人が見てるからー」
焦る言葉と息が耳を擽る。
はぁぁぁ、限界ギリギリ。
両腕を掴んで抱きしめていた身体を離す。
「お前な!こんな寒空の下で待つとか!どーなの?!!馬鹿なの?風邪ひきたいの?!!って話よ。ほらマスクくらいしなさいよ」
常備してる新しいマスクを渡す。
「ん、サンキュ」
自分でしろと言って渡した癖に顔の半分がマスクで隠れてしまったことが残念で
「おい、ちょっと」
と呼んで
ん?っと近付いてきた顔から指を引っ掛けてほんの少しマスクをズラして。
「!!!」
驚きで大きく目を見開いたまま無言のハルの首に
俺は自分のしていたマフラーをグルグルと巻きつけて歩き始める。
「あはは、おいてくぞー」
振り向くと俺のマフラーを巻いたハルがそこにいる。
ーーうん、あれは俺のだ。
ーー確かに俺の…俺の男 だ。
***
Sideハル
くしゅんっ
「おい、大丈夫か?」
心配そうな声。
「ん、ヘーキ」だと思う。
「帰ったら薬飲めよ?それにしても何で中で待ってなかった?」
男前が眉を顰める。
何でって……それは俺が狭量だから。
どこにいても何をしても女の子の視線を釘付けにしてきた男に分かりようもない感情。待ち合わせのカフェで「いらっしゃいませ」とニッコリ笑うウェートレスさんを見てオレは落ち着かなくなった。
やばい、やばいやばいやばい。
絶対やばい。
「フユトはおっぱい大きいコだろ?」
決して聞くつもりのなかった事を聞いてしまったのは多分さっきからすれ違う人達がチラチラと隣を歩くフユトを盗み見るからだ。
「嫌いな男いる?」
にやけた顔までカッコイイとか!まじ無理……泣けてくる。
「俺は別に……」
「ん?別に?好きじゃないって?嘘つけー好きだろ?」
神様を恨みたくなるくらい時々フユトは残酷で意地悪だ。
「あはは、そーだよな。実は俺も好き!」って軽くかわせす事も出来ない不器用な自分がイヤになる。
「そっか、じゃーやっぱり中で待ってれば良かったかな」
あははごめんごめん、とかもう
白々しくて自分でも笑えるレベル。
「どゆこと?」
「……」
「なぁ、ハル〜?
どーゆー事よ?何で泣いてんの?お前は」
えっ?えっ?オレ泣いて…るの?
「しゃーねーなぁ、お前がイヤならやめるわ」
「?」
「聞こえた?俺がおっぱい好きなのお前が泣く程イヤならやめるって言ったの。
この意味分かる?」
意味なんて分からないままで目の前の男に見惚れる。
「分からない?」
ふっと距離を縮めて耳元で囁く声は甘やかで。
少し遅れて香るフレグランスは俺の首に巻かれたマフラーと同じ匂いがした。
「分からない」
だけどもしも
その答えが俺が泣いてるわけと同じ理由なら。
そしたらもう俺は何も怖くない。
ーーなぁ
ーーそーだろ?フユト
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