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第3話
「こんばんは、敦也さん」
夜、父親も母親も敦也に頑張れと言葉をかけて出ていった。何を頑張ればいいかさっぱり分からなかったが、クッキー片手に瑛斗が来るのを待った。
テレビを見ながら待っていると、チャイムが鳴った。瑛斗と思い敦也が玄関のドアを開けると、そこには見たこともないようなイケメンがいた。イケメンが、狼のコスプレをして立っていたので、ビックリした敦也は勢いよくドアを閉めた。
「………敦也さん。開けてください、あーくん」
「知らない。俺は知らない!こんなイケメンな知り合いはいない!」
「俺だって成長するんですよ。ほら、あーくん開けて。じゃないとあの時みたいに泣き真似しますよ」
「分かった!開けるから」
瑛斗と思いたくはなかったが、狼のコスプレのイケメンは瑛斗らしい。あんな可愛らしい男の子が、こんなイケメンに成長するなんて信じられなかった。いや、信じたくはなかった。しかし、これが現実だ。
「敦也さんは、ハロウィンなのにコスプレをしないんですか?」
「しないよ」
「そうですか。俺は、15年前のハロウィンを思い出してもらおうと狼のコスプレをしてみました」
「あー、そうですか」
「覚えてます?15年前のこと」
ニコリと瑛斗が笑った。しかし、その笑みを見て敦也は嫌な予感しかしなかった。何度か、この手の類いの笑みを見たことがある。この笑みを見てしまったからには、悪いことしか起きない。
ヤバイ。逃げよう。そう思ったが、もう手遅れだったらしく。
「―――はぇ?」
「意外と軽いですね、敦也さん」
気づいたら、敦也は瑛斗にお姫様だっこされていた。横抱きである。一瞬の出来事だった。
抵抗する暇もなく、瑛斗に敦也の部屋へと運ばれた。
ドサッと音をたててベッドに下ろされた。そして敦也の上にまたがるようにして、瑛斗がベッドに乗ってくる。
「え、瑛斗くん。これは一体なんの冗談、」
「冗談ではありません。15年前、俺はこう言いましたよね。“Trick so Treat”と」
「はい。そうおっしゃってました」
「それを今から、実行するんです」
そう言った瑛斗が、腰につけていたポーチからいろいろと取り出した。ゴム、ローション。それから、大人の玩具数点。
「ゴムは、敦也さんのお父さんから。ローションはお母さんからです。そしてこの大人の玩具は、俺の両親からで」
「え、えいとくん?」
「大丈夫です。俺でしかいけないように悪戯いっぱいしてあげますから」
もうダメと敦也が思ったその時、瑛斗に大人のキスをされて考えるのをやめた。
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