10 / 84
3-2
ほんとはいっしょにえっちしたい。
いっぱい3Pしたい。
でも笠原と紙屋って、お互い、好きなんじゃないのかな?
だったら、俺、やっぱいない方がいいもんな?
以下、一学期終業式前の会話。
「八月最初の土曜日に花火大会あるよね?」
「あーあるなー」
「俺、去年行ったー!」
「あの花火、ウチのベランダから見えるよ」
「へーすげー」
「マジで!? うっそ、すげー!!」
今日、その花火大会、当日。
別の友達からのお誘いはあったが、笠原紙屋からはなーんの連絡もなく、気分が乗らない加賀見はお誘いをキャンセルして。
こっそりこそこそ高台にある紙屋宅近くまでやってきた。
あれ、もしかして俺、ちょーきもちわるい?
別にふつーにこっちから連絡して「花火みせてー」って言えばいーのに、なんで電柱裏に隠れてんの?
こわくない? 完全やばい人じゃない?
こんなとこ二人に見つかったらお陀仏…………。
「なにしてんだよ、加賀見」
なんと笠原に見つかった、よって加賀見はお陀仏することになった。ではなく。真っ青かつ真っ赤になった。
「お前、すげー顔色、黄色プラスしたら信号じゃねーか」
笠原、コンビニ袋を手にしている、中身はアイスクリームの箱だ。
あ、やっぱ笠原、今から紙屋んちに……。
で、花火見つつ、えっちもしつつ……。
『やっだめっ人に見られるっ紙屋!』
『いいよ、見せつけちゃおうよ、笠原……?』
『あんっこのエロ眼鏡ぇ……!』
「おい、加賀見、人の話聞いてんのか?」
「えっあっえっ?」
「こんなとこでなに……あ、そっか、花火よく見える穴場の公園あんだっけ、この先」
「あっ、えーと」
「お相手は例の先輩彼女、だよな、とーぜん」
「あー……」
「あれ、加賀見?」
笠原を迎えにやってきた紙屋、よって加賀見はお陀仏することになった。ではなく。
「あ、もしかして花火見物? 彼女とだよね?」
「とーぜん童貞卒業したよな、パチパチ、おめでとー」
「まだ時間あるし、今からごはんかな、あんまりボロボロこぼさないようにね」
「ムリだろ、絶対こぼすって、こいつ」
「ち、違う、違うし」
「あ、ごはんじゃないの、え、もしかしてラブホとか?」
「うわ、サイアク、不純スギ、きめぇ」
笠原の「きめぇ」発言にカチーンときた加賀見。
ぎゅっと拳を握って電柱裏から言い返した。
「ソッチだって不純だろーが!」
「あー?」
「声でかいよ、加賀見」
「はっ花火見ながらシまくるんだろ!! てか毎日えっちしてんだろ! このえろえろども!!」
「してねーし」
「全然、ね」
「……えぇ……? ウ、ウソばっか、ウソつき!!」
「ウソじゃねーよ、そーいう空気にならねーの」
そ、そうなんだ。
あれ、俺、ちょっとほっとしてる。
ああ、そっか、俺、さみしかったんだ。
二人にハブられたらどうしようって、そうなる前に、自分から離れたんだ。
あ、なんか今なら正直に二人に言えそう、俺。
「俺、先輩女子と付き合ってない、あれウソ、ごめーん」
電柱裏でふにゃっと笑った加賀見。
すると笠原と紙屋、いやにゆっくり顔を見合わせた……。
ともだちにシェアしよう!