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ずっとテレビの方を向いていた笠原はピザケースを挟んで隣に座る紙屋の問いかけに眉根を寄せた。
「は?」
「最近、加賀見と青山さんのこと、ずっと話してる」
「あーーーー……そうだっけ」
「好きなの?」
「うぇ。ねーわ。ないない、それも」
「そうかな」
冷めてしまったピザを一口かじってケースに下ろし、笠原は、軽快なオープニング曲を流すテレビに向かって正直な気持ちを告げた。
「別に好きとか、んな恋愛感情、ねーよ。ただ加賀見に先越されんのが面白くないっつーか……なんかあれ、だせー優越感。いつだってあいつより上にいたい、みたいな……置いてかれんのが気に食わねーだけ」
「それ、けっこう、ガチな話だね」
「ガチで悪ぃか、お前が変な勘違いするからだろーが、エロ眼鏡」
「ねぇ、笠原」
「CMスキップしろよ」
「二人でシてみない?」
CMの流れるテレビを見たまま笠原はフリーズした。
「だめ?」
「……加賀見がいないと、3Pじゃないと、意味ないんじゃねーの?」
「……夏休みまではそうだったかもしれないけど、最近は、違うかも」
「違うかも、って……二人で、とか、それただのガチホモじゃねーの?」
「笠原、今さら自分だけノーマルぶらないでくれる」
「ッ……」
「ふつう男の友達同士で3Pなんてしないから」
「……わーってるよ」
「笠原」
アニメ本編が始まったテレビから、笠原は、ぎこちなく顔を逸らして。
さっきからずっと自分を見つめている紙屋と、やっと、視線を重ねた。
「加賀見のことばかり意識しないでよ、笠原」
黒縁眼鏡の紙屋はほんのり顔を紅潮させていた。
「アニメばっかり見てないで、俺のことも……見てよ?」
あ、近。
あ、キスされた。
あ、ピザくさ。
あ、どきどき、してる。
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