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「むにゃ……種馬ぁ……」
「えっ?」
「パコパコ、3パコパコ……」
「ッ……自分の名前、言える? どこか頭とか打った?」
軽く肩を叩かれた加賀見はやっと目を覚ました。
こどもみたいに目許をゴシゴシしながら上半身を起こしてむにゃむにゃ呟いた。
「かーちゃん、今、何時ぃ……朝ごはん、苺ジャムトーストがいい」
寝惚け眼で加賀見が洩らした言葉に彼は……つい噴き出した。
私大の総務課に勤務する事務員であり、半袖にネクタイ、シンプルな黒のビジネストートバッグを肩に提げている。
眼鏡をかけて、癖のない黒髪、手首には就職が決まって購入した愛用の腕時計。
さも優しげな眼差しをさらに和らげて今西渉 はほっと一息ついた。
「よかった、具合が悪いとかじゃないんだね」
ん?
この人、誰?
「でもこんなところで一人で寝てたら危ないよ?」
点々と蚊に刺された腕をボーリボーリしながら、加賀見は、地面に跪く渉を見た。
すぐそばに設置された常夜灯にぼんやり照らし出されている年上の男。
「苺ジャムトーストって、おいしそうだね」
あ。
なにこの人。
この人とパコパコがしたいですっっ!!!!
「この変態が」
「え!? 曲にできちゃうくらい夏がくれば思い出すレベルのステキな経験じゃ!?」
「確かにちょっと特別な思い出にはなるね」
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