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10-いけいけおせおせ!夜ごはん!

♪ピロリーン 「あ! 渉さんからだ!」 昼休み中、LINEのメッセージを受信してハンバーグサンド片手に加賀見は舞い上がる。 真正面で食事をとっていた笠原と紙屋はげんなりした。 「渉さん、あったかい蕎麦とミニ天丼食べてるんだって!」 「限りなくどーでもいい情報ありがとな、加賀見」 「加賀見、もういいよ。心の内に仕舞っておいて? 俺達に報告なんてしなくていいから」 メッセージを受信する度にいちいち内容を伝えてくるウザ加賀見に二人は午前中から堂々と白けていた。 登校するなり、渉が昨日見た夢の話、休み時間には、渉が今見ているドラマの話、他にも、渉が好きだったマンガの話、などなど。 ♪ピロリーン 「もう言うなよ、何も喋んなよ、口閉じとけ、加賀見ッ」 「あのね! 渉さんの昨日の晩御飯、和風パスタだって!」 「……またどーでもいい情報が脳内に蓄積された」 「加賀見、明日から俺達食堂で食べていい?」 「え!! 淋しい!! やだ!!」 最近ずっと朝昼晩、加賀見は渉とLINEでメールのやり取りをしていた。 他愛ないことをポチポチ入力して、返信がきて、その度にドキドキワクワク盛り上がっていた。 「えーと、笠原はアニメが大好きです、と」 「やめろッ! 俺のこと書くなッ! アホ加賀見ッ!」 当事者にとってはバラ色の日々かもしれないが第三者からしてみれば、うざい。 「あんまり返信に時間とらせたら休憩できないんじゃない」 「社会人だろ、バタバタしてんじゃねーの」 「俺、渉さんとデート行きたい!」 「……お前、宇宙人か、ちゃんと会話してくれ」 渉さんと出会って半月くらい経ったかな。 メールはしてるけど会ってない。 最初の二日間に公園でちょこっと話しただけ。 デートしたいデートしたいデートしたい。 渉さん会いたい!! 「晩ごはんとか誘ってみたら」 パックの調整豆乳を飲みつつ紙屋に適当にアドバイスされて加賀見は。 「えーと、渉さん、今日の夜ヒマですか、晩ごはんどーですか、と」 「げ。いきなり当日お誘いかよ」 「せめて明日とか……ああもう、頭痛い」 「ひとりっこの紙屋は頭もいいし、えろくて、体位別にエロ動画を、」 「やめて訴えるよ加賀見」 ♪ピロリーン 「わ!!!!」 加賀見の満面の笑顔を前にして笠原と紙屋は聞かずともOKを得たのだと知る。 加賀見の奴、グイグイ攻めるのな、こいつってスイッチ入ったらやっぱ肉食なんだ、変態属性のくせに。 加賀見って切り替え早いな、まぁ別にいいけど、俺は笠原一筋だし。 ウホウホ浮かれている加賀見にあまずっぱい青春もやっと感を抱くようで、でもやっぱりこいつうざいと感じる二人なのだった。

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