41 / 84
10-4
「二次会行こう!!」
「高校生だからバーとか行けないでしょ?」
「渉さん、バーとか行っちゃうの!?」
「……行かない」
ファミレスを出た二人が向かったのは……二人が出会った公園だった。
静まり返った遊具を少し遠目にひんやり涼しい片隅のベンチに並んで座る。
表通りから聞こえてくる微かな喧騒。
虫の鳴き声も上乗せされて何だか夜想曲のようだ。
「明日も学校だー」
「僕も仕事だよ。一限目は何の授業?」
「えーと、なんだっけ、あ、世界史だっ、寝れる!」
LINEでのやり取りと変わらない他愛ない話。
「ありがとう、缶コーヒー」
ファミレスの代金を支払った渉に加賀見は自販機で缶コーヒーを買って差し出してきた。
有難く頂戴していたそれをちょっとずつ飲んでいく。
「好きな人、いたんだよね、俺に似てたって」
「あ……うん」
「告白しようって思わなかったの?」
渉は首を左右に振った。
「とてもじゃないけど」
『渉さんっっ! 俺と付き合ってください!』
「もしも加賀見君みたいに思い切って告げていたら、また違う<今>があったのかもしれないね」
渉が感慨深げにそんなことを口にした、次の瞬間。
「やだ!!!!」
もしも話を加賀見に思いっきり拒絶されて渉は正直びっくりした。
手の中の缶コーヒーまでいきなり奪われてグビグビ飲み干され、束の間、呆気にとられた。
「そ、そうだね、きっと玉砕して、別に今のこの状況と何にも変わらな、」
「絶対その人と付き合ってる、渉さん」
渉さんみたいな人に告られたら誰だってころっといくもん。
渉さん、優しいから、すっごく居心地いいから、絶対今でも続いてる。
「だから、仕事が終わったらその人と毎日デートするから、こんな公園になんか来ないの、きっと毎日ノリノリでバーに行ってるの」
「ま、毎日ノリノリでバーに」
「そんで……俺とは出会ってない、きっと」
あ、勢いでコーヒー飲んじゃった、ごめん。
ともだちにシェアしよう!