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あんまり拒むのも可哀想な気がして。
まだ明るい三時過ぎ、まぁまぁご近所のようだし、夕食時までにお家に帰したらいいかと考えて。
「わぁぁ」
マンションで一人暮らしをしている渉は加賀見を初めて部屋へ招いた。
日当たり良好な角部屋のワンルーム。
インテリアや雑貨は無〇良品でほぼ揃え、中央に丸テーブルとダイニングチェアが一脚、一人掛けソファとテレビが向かい合い、添えられたサイドテーブル、その向こうの窓際にセミダブルベッド。
壁際のキッチンスペースはきちんと片づけられていて清潔感あり。
実に渉らしいお家に通された加賀見は口を開けっ放しにしてきょろきょろきょろきょろ。
「一人暮らしの家って初めて来た」
「お兄さんは実家にいるの?」
「うん。へ~。ふ~ん」
あんまりにも加賀見が興味津々にきょろきょろするのでちょこっと恥ずかしくなってきた。
持ち帰り用に買ってきたドーナツの紙袋を丸テーブルに下ろすとネクタイをしゅるり、第一ボタンを外して、住人の渉はとりあえず洗面所で手洗いうがいを。
「渉さん」
洗面所から戻ってきた渉に加賀見は満面の笑顔で告げた。
「おなかへった!」
♪いっぱい食べ……………過ぎじゃないのかな、加賀見君。
「向こうでたくさん食べてたけど。もうお腹空いちゃった?」
「電車に乗って移動してる間に消化したみたい」
「そ、そうなんだ。じゃあドーナツ食べようか」
「うん!」
思いっきり素直に頷いた加賀見に渉も自然と笑顔を浮かべた。
こどもじみた笑い方に誘われて、そうするのが条件反射みたいになっているというか。
一人掛けのソファに加賀見を促しておいて自分はキッチンに立つ。
一先ず電気ケトルを活用してインスタントコーヒーの準備。
あ。
加賀見君、ブラックだと飲みづらいかも。
砂糖もミルクも両方入れるのかな、どうなのかな?
「加賀見君、コーヒー、砂糖とミルクどうしようか? 甘めがいいかな?」
すると。
「俺、コーヒーはブラックでいい」
思いがけないほどに近くから聞こえた返事。
びっくりして振り返れば、いつの間に忍び寄ったのか、すぐ真後ろに加賀見が立っていた。
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