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「……渉さぁん……」
渉から少しだけ離れた唇。
唾液を滴らせたまま締まりのない声で呼号され、発情キスに成す術もなく流されていた渉はじんわり濡れていた双眸をぱち、ぱち、瞬きさせた。
「……加賀見君、よだれが」
下顎にたらーりしていた唾液を見兼ねて渉が拭おうとすれば。
伸びてきた指をぱくんっ。
「わ」
「んむ……甘い、渉さんの指」
「か、加賀見君」
生まれて初めて男子高校生に指ぱっくんされた渉は、どうしよう、と思った。
さっきからずっと股間に股間を押しつけられて、真後ろはシンク、逃げ場がなくて。
だ……駄目だ、だめだめだめだめ。
加賀見君、高校二年生だよ?
七歳も年下なんだよ?
まだ夕方前だよ?
外、明るいんだよ?
このまま加賀見君と……え、えっちなことするなんて……駄目だ。
「加賀見君……ほら、お腹減ったんだよね? もうお湯湧いたから、コーヒー淹れるから、ね? ドーナツ食べよう?」
まだスプーンとコーヒーカップを持ったままの渉がそう言ってぎこちなく笑いかければ。
加賀見は……口内に咥え込んだ二本の指にカリッと歯を立てた。
「ドーナツより、渉さん、食べたい」
ちょ…………ッ。
だめだめだめだめ、むりむりむりむり、どうしよう!!
流されそうーーーーーー!!
おいしそうに自分の指をしゃぶっている男子高校生に背筋ブルブルが止まらない渉。
彼の震えに気が付いた加賀見。
しゃぶっていた指を吐き出した。
唇から爪の先にかけてよだれが、たらーり、ぶら下がった。
「渉さん、怖いの?」
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