54 / 84

13-2

「もしかして誰もいない紙屋んちでいちゃつきたいの? それならここでいちゃついていーよ? 俺、気にしない!」 二人揃って腹が立った紙屋と笠原はテーブル下で加賀見の足をそれぞれ同時にグリグリ踏んだ。 「いででで!」 「それはさ、加賀見のことだよね? 社会人の今西さんの都合も無視して毎日部屋に押しかけてがっついて」 「この発情変態犬が」 「えーーーっそんな褒められたら照れるなぁ」 「「褒めてねぇよ」」 結局、加賀見がよしとする時間帯まで付き合わされた紙屋と笠原。 「あ、そろそろ時間だ! じゃーねー!」 「加賀見、月末にまとめて交遊費請求するね」 「腹上死しろッ変態犬ッ」 店の前であほあほ笑顔の加賀見と別れて帰路についた。 夕暮れの騒がしい街並みを二人で並んで歩く。 嗅ぎ慣れた埃っぽい風と褪せた西日に青春もやっと感を抱きながら。 「加賀見、何気に順調だよね」 「だな……前はあんなに俺らに……」 「うん?」 「なんでもねー」 歩行者信号で立ち止まる。 他多数の通行人に紛れて青に変わるのを待つ。 「今からいちゃつく?」 紙屋がスリ、とさり気なく意味深に肩に擦り寄ってきて、笠原はそれまで冷めていた目つきを俄かに発熱させた。 「親、昨日また旅行に出かけて。今日、誰もいない」 「……」 「笠原、ウチ、来る?」 信号が青に変わる寸前、紙屋の問いかけに笠原は赤面しつつぶっきら棒に頷いた。 紙屋は小さく笑った。 人前で手を繋ぐことができない代わりに、世界で一番大切なクラスメートの歩調にぴったり合わせて、白線の上へ足を踏み出した……。

ともだちにシェアしよう!