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「あ! 今のッ、そうじゃ!?」 「うーん、年齢的には近そうだけど」 「お前にはぜんっぜん似てなかったんですけど」 「やっぱ下で見張った方がいいのかな~気になってトイレ行けないよ~もらしそ~」 「「このバカッ」」 二人にガンガン足を蹴られた加賀見は「ちゃんと見張っててね~それっぽいのが入ってったら教えてね~」と足早にトイレへ。 紙屋は眼鏡をかけ直して「こんなに無駄な時間を過ごすの、いつぶりかな」とチョコレートホイップつきバニラアイス豆乳ラテを飲みながらぼやく。 笠原は「昨日ぶりだろ。加賀見に召集かけられて同窓会阻止したいって泣きつかれたときぶりだろ」とクッキーをかじりながら答える。 そのとき。 「あ」 窓際にいた紙屋がつい声を上げ、どうでもいい風を装っていた笠原はイスをガタッと鳴らして腰を浮かした。 「来たッ?」 「あの人。違うかな」 「どれ……あーーー……っぽい、かも」 「っぽい、ね」 どうでもいいようでいて実はちょこっと気になっていた紙屋と笠原は焼き鳥屋に入っていった彼の後ろ姿を少し遠目に見送った……。 七時を過ぎ、遅れてやってくる数人を抜きにしてクラス同窓会は始まった。 渉は皆と会話しながらも、やはり、仄かな緊張感を拭えずにいた。 今、どんな風になっているんだろう? どんな話し方をするんだろう、前と変わらない? 落ち込んだり、どんなに気分がモヤモヤしていても、彼の声を聞けば。 曇っていた空に太陽が覗いたみたいに心は晴れ渡った。 僕の憧れだった。 憧れる余り恋をした。 教室でいつもその声をこっそり探していた……。 「お。意外と早かったじゃん、お疲れ!!」 何やら気配がしていたかと思えば仕切りの襖が背後で開かれ、斜向かいにいた幹事が声を上げた。 続いて彼の名前が呼号されて渉の緊張感はピークに達した。 異性に一番人気があった彼の登場に女子一同盛り上がり、両隣にいた元同級生も次々と振り返る。 渉も、一気に急いた鼓動に促されるように振り返った……。 「ねーねー、ほんとにそれっぽいの来なかった? さっきから女の人とかオジサンばっかだよ!」 身を乗り出して焼き鳥屋の出入り口をずっと見下ろしている加賀見に、紙屋と笠原は顔を見合わせた。 「ねぇ、加賀見」 「お前どーするつもり」 「ほえ?」 「その人がお店に入ったら殴り込みにでも行くつもり?」 「この行為って、なに、なんか意味あんのかよ」 二人に一斉に問いかけられて加賀見は珍しくたじろいだ。

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