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「これから二次会カラオケに行きまーす!!」
三時間ほど焼き鳥屋で過ごした一行は二次会に向けて移動を始めた。
幹事が支払いを済ませている間、店の前に集まり、LINEの交換をしている者もいれば泥酔いして友人の肩にぐったりもたれている者もいた。
「あれ、今西も二次会行かない派?」
「うん。ごめん。でも今日、とても楽しかった」
渉は幹事に挨拶し、二次会に向かう一行を店の前から見送った。
最終バスまでまだ余裕があると、ある程度セーブして気持ちよくお酒を楽しんだ彼は緩やかに方向転換し、そして。
「……渉さん……」
いつの間に後ろに立っていた加賀見と目が合ってびっくりした。
「え、加賀見君?」
どうして加賀見君がここに?
キャップをかぶって、さっと俯いてツバで顔を隠し、いつになく気後れした風な高校生に最初は呆気にとられていた渉だが。
困ったようにやんわり笑った。
タオルハンカチで眼鏡をフキフキして「君って本当に変わってるね」と呟いた。
「僕のこと待ってたの?」
加賀見は素直にこっくり頷いた。
渉が着ている七分袖チェック柄のシャツをきゅっと掴んで「ごめんなさい」と謝った。
「もしかして七時からずっと?」
「うん」
「何か食べた? お腹減ってない?」
「ううん」
「そう。もう遅いから帰ろう?」
「うん」
聞きたいことが聞けずにモジモジしている加賀見を促して渉は歩き始めた。
「やれやれ。あんな息巻いて出て行った割に、電柱みたい、加賀見」
「ほんっと、ばかだなー、あいつ」
二階席から様子を眺めていた紙屋と笠原は心からの苦笑を友達に捧げた。
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