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渉さん、どうだったんだろう。 お酒の匂いがするけど、そんなに酔ってなさそう。 いつも通り優しい渉さん。 同窓会、楽しかった? 好きだった人と、どんな話したの? 「加賀見君、バス? 電車? まだ最終逃してないよね?」 週末で人の行き来が絶えないアーケード街を渉と進んでいた加賀見は口を開いた。 「泊まりたい」 思わず渉は足を止めた。 同じく隣で立ち止まった加賀見を繁々と見上げた。 「渉さんち泊まりたい」 ダメ元だった。 優しいが真面目な渉のことだ、きっと断られると思った、だから。 「うん……わかった」 「えっっっっ」 加賀見はめちゃくちゃ驚いた。 まじまじと渉を見つめ返した。 「ちゃんとお家に連絡入れてね?」 アルコールで上気していた頬に別の熱を宿らせて渉は加賀見に笑いかけた。 あ。どうしよ。 勃起しちゃう。 「ぼっ、ぼっ、ぼっ」 「え? ぼぼぼ……?」 「ッ……連絡する! 今からする!」 慌ててクロップドパンツの尻ポケットからスマホを取り出し、母親にLINEでお泊まり報告をしている加賀見を前にして。 渉は思い出す。 久し振りに再会した、高校の教室で密かに恋していた相手を。 再会するまでは正直どきどきしていた。 今、どんな人になっているんだろうか、純粋な期待や緊張で胸がいっぱいだった。 実際、顔を合わせてみて渉は気がついた。 懐かしさで気持ちは弾んだ、しかしかつて魅了された声はあくまで鼓膜に届くのみで、胸まで届くことはなかった。 ……顔立ちは似ていても、当然、彼と君は別の人間で……。 「紙屋んちに泊まるって嘘ついた!」 そう。 もう僕の心はすっかり加賀見君のものになってるんだ。 「お泊まり! お泊まり!」 さっきまでのモジモジや気後れした態度はどこへやら、不安すら忘れ、渉との初お泊まりに一気にハイテンションになったあほあほ加賀見。 「お泊まり!!!!」 「うん、泊まっていいから、ちょっと声が大きいかな、加賀見君」 渉が優しく注意すれば加賀見は両手で自分の口元を覆った、いつも紙屋と笠原にされている行為に自ら至ったわけである。 「むぐぐ、ごめんなさぃ」 あほあほ加賀見のあほあほな行為に渉は……きゅんっと胸を高鳴らせた。 「本当にお腹減ってない?」 「んー?」 「何かご馳走しようか? 何、食べたい?」 喧騒が溢れるアーケードの片隅で。 不意に頭を屈めた加賀見は両手を添えて渉に耳打ちした。 「渉さん食べたい」 こんな場所で、こんなこと、加賀見君って、ほんっとう……。 加賀見の声が密やかに触れた耳たぶを火照らせて、渉は。 色気のないディスカウントストアの前で食べたい宣言してきた加賀見からぷいっと顔を逸らして。 「うん……わかりました、加賀見君」 そう、震える声で答えた。

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