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第15話

オレは慌てて声を上げる。 「結婚なんてできませんよ!オレはβだし、男だし」 「そんなの本人の心持ちだろ?」 否定するオレに祐吾さんが語りかける。 「オレ達だって男同士だ」 「でも誉さんはΩじゃないですか」 いろんな法改正を経て、いまでは性種・性別を問わず婚姻は可能になったが、それでも結婚相手は女性やΩ性がほとんどだ。 「そもそも間宮は後継者なんだから、子供がいないと困るだろ?」 「んー。ねえ誉、その子産まれたらオレたちの養子にちょうだい?」 「だめに決まってんだろ、頭湧いてんのか」 突拍子もないお願いは祐吾さんに一喝される。 間宮は「あは」とうれしそうに頬を緩めた。 「そうだよね。まあ子供はさ、養子でもいいし、そもそも後継のためだったら一族の中で優秀な子を選べばいいんだから、あまり気にしなくていいと思うよ。それより、ねえ吉成、結婚しようよ」 手を取られて「ねえねえ」とまるで子供のおねだりだが、素直に頷くことはできない。 ただ、うれしいとは、思う。 「…やだよ。いきなり言われても困るし、それにオレ、間宮のΩ遊びまだ納得してない」 つん、と顔を背けると「そんなあ」と情けない声が響いた。同時に「そりゃそうだ!」と誉さんが声を上げて笑う。 「ぼくだって、琉じゃなければ、こんなクソαおすすめしないね。かわいい吉成くんにふさわしいいい子は、もっと他にいるは――」 誉さんの言葉が変なところで途切れる。 ん?と振り返ると、間宮がやけにきれいな笑顔を浮かべて言った。 「わかった。すぐにとは言わないから、ちゃんと考えてくれる?」 「……うん」 こくりと縦に頷くと、間宮の笑顔がますます輝く。 「…αは怖えなぁ」と祐吾さんが呟いた。 それから間宮は、来たときとは一転、ご機嫌で帰って行った。キスとハグがしつこいのでオレだけ社長室の中で別れたが、戻ってきた誉さんはなんだか疲れた顔をしている。 「琉、むかしよりもっと面倒くさい性格になってない?」 「…はは、どうですかね…」 遠い目をする誉さんに同情する。 *** 思いがけず穏やかに去って行った間宮だったが、職場は混乱して仕事にならず、その日は全員が定時までに帰された。オレも早い時間に祐吾さんに送ってもらい帰宅する。 家政婦さんが用意してくれた夕食を食べ、風呂に入り、早いうちにベッドへ向かう。間宮はすこし遅くなると家政婦さんの方へ連絡があった。 眠気が訪れないまま、ごろりと寝返りを打ったところで寝室の扉が開いた。 「吉成?」 「…おかえり。遅かったな」 にこにこと頬を緩めた間宮が近づいてきて、前髪を払い、やさしく額に唇を落としてくる。 「午前中できなかったことを終わらせなきゃいけなかったから」 「あっそ」 勝手にこっちの会社に来たくせに、とはさすがに言わないでおく。 「飯は?」 「もう食べた」 「…風呂、はいってくれば」 その瞬間、間宮はあからさまに驚き、満面に喜色を浮かべた。 「うん!うん!すぐ出てくる!!」 「ゆっくりでいいよ」 飛び出していく間宮の背中に声をかけるが、届いたのかどうか。現にオレがまんじりとしている間に、すぐさま濡髪でバスローブ姿の間宮が戻ってきた。 「うふふ、吉成」 「…髪くらい乾かしてこいよ」 いそいそとベッドに乗り上がってきた間宮が首筋に顔を伏せる。濡れた髪が冷たくてくすぐったい。身じろぎすると、ぎゅうっと抱きしめられた。 「えへへ。吉成、いい匂いがする」 「いい匂いなのはそっちだろ」 間宮の肌からは同じボディソープの香りがしている。頭を撫でられ、やさしく唇を重ねられた。ゆるく口を開いて相手の舌を招き入れる。 「ん、ん……っ」 広い肩に腕を回して引き寄せる。湯を使ったからか、間宮の肌が熱くてくらくらした。 布団の下にもぐり込んできた手がTシャツを越えて、直に脇腹を撫でる。するすると肌を彷徨う指がスウェットのウエストを過ぎて下腹へと伸びた。 「ん、ふ、」 ゆるく芯を持っていたものがぴくりと震える。 宥めるように竿を数回扱かれて、指の腹で奥の窄まりをくるりとくすぐられて。 「きれいにして待っててくれたの?」 「あ、あ……っ!」 間宮はうれしげに囁き、すこし強めに舌先を吸い上げてきた。オレはもう息が上がっている。 スウェットと下着を引きずり下ろされ、本格的にオレの上へと乗り上げた間宮は、キスを深めながらさらけ出されたそれにもう一度指を絡めてきた。 「んんっ、あ、あぁ……っ」 丁寧に施される愛撫に声が止まらない。 耳朶の下辺りでちくりと痛みを与えられる。巧みに扱かれる前からはいつの間にか濡れた音がして、オレはひくひくと喉を震わせた。 「ああっ、だめだ間宮…っ、オレも、オレもする」 男の右肩に手を当てて僅かに頭を浮かせると動きが止まる。そして楽しげな声が言った。 「そう?じゃあ口でしてもらおっかな」 「……いいよ」 上体を起こす間宮につられるように起き上がり、ローブの結び目を解く。引き締まった腹筋を撫でてから、大きく口を開いてゆっくりと彼の雄を迎え入れた。 「ふふ。吉成の口、ひさしぶり」 喜びに弾んだ声にそうだなと心の中で同意する。 ずいぶん前のことになってしまったが、以前は互いに互いの身体に夢中だった。間宮のいいところはすでに知っている。自分の好きなところも。 「口の中、気持ちいい?」 間宮のものに舌を這わせながら、苦しくない程度に奥まで含む。膝をついて間宮の腰に縋って、そんなみっともない自分の姿は頭から追い出して、こくこくと頷く。 「だして」 舌を押し当てて強請ると、一瞬息をつめた間宮が吐息だけで笑った。 「いいよ。――全部のんで」 うなじを指先でくすぐられて喉を鳴らす。 「ん」と眉を寄せた間宮の雄からほどなく精が迸り、オレはどうにか口腔で受け止めて、すべてごくりと喉の奥へと嚥下した。

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