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第3話
距離を置こうとしたのは、瑞樹の身勝手な健気さに少々恐怖を覚えたからだ。清一郎が何の気なしに呟いた言葉を瑞樹は重く受け止め、実行する。今月は生活費が苦しいな、とぼやけば、翌月の家賃が勝手に支払われている。帰宅するとすぐにチャイムが鳴り、家に上がり込まれて、食事を用意される。不要なプレゼントの山。付き合うようになってからも、清一郎の出勤する日には必ず店へ現れ、勝手に手伝ってくる。
何度注意しても、瑞樹のそれは直らなかった。むしろ、どうして怒られるのかが理解できないようだ。あなたが好きだから。あなたを思って。そう返される日々に、心が錆び付いていった。
昨夜ついに、仕事を辞めませんか、と提案された。いいや、提案ではない。あれは命令に近い。清一郎はそう感じた。瑞樹は優しく微笑みながら「僕の貯金で暮らしましょう」と言った。ひとりでは使い切れない遺産を貰ったのだと。働かなくても金が有り余っているようだった理由はそれか、と清一郎は悟った。そして、このままでは自分が、六才年下である彼のヒモとなってしまうと感じた。駄目になる……ろくでなしな男にさせられてしまう、と。
すぐに別れを告げなかったのは、未練があったからだ。この美しい男を手放したくないと思った。平凡である自分に、ここまで尽くしてくれる人間はいない。そうも思っていた。それだから、瑞樹がわかってくれるまでは距離を置こうと言ったのだ。
「ああっ、っ、清一郎……気持ちいい? 僕の舌……ちゃんといやらしい動きになってる?」
甘えた声で尋ねられ、清一郎は瑞樹を強く抱きしめる。こんなに可愛い奴を手放せるか。いつもそう思っては、彼の妙な健気さに失望する。喜びののちに落胆があるとわかっていても、こうして引きずられる。魅力に囚われ、逃れられない。
舌を濃厚に絡ませながら、清一郎は瑞樹の華奢な身体をベッドへ押し倒した。彼の手に助けられ、素早く服を脱ぐ。裸となった肌を擦り合わせると、互いの身体が溶け混ざるような、甘美な感覚がした。強い一体感に酔いそうだ。清一郎はすね毛が生えた足を、彼の足に擦りつける。
「っん、くすぐったい……」白い喉を仰け反らせ、瑞樹が囁く。
彼の胸元へ顔を埋め、薄桃色をした左右の蕾を指で潰す。柔らかいそこはすぐに隆起した。両方を同時に弄れば、色味がどんどん濃くなってゆく。艶めく蕾が愛しくなり、清一郎はそこを指で摘まんで強く捻りあげた。
「そこっ、気持ちいい……っ」たっぷりとある細い髪を揺らしながら喘ぐ瑞樹の唇は、先ほどのキスの余韻で濡れている。
「いやらしい乳首だ。こんなに硬くしこらせて」
清一郎はそう囁きながら、瑞樹の蕾に舌を這わせた。唾液をそこへぬちゃぬちゃ塗りつけ、片方は指で転がしながら、もう片方を甘く噛む。
「んんっ、っ、あなたが弄るからっ、ああっ」
「可愛いことを言うなよ」
胸元に塗れている自らの唾液を啜り上げると、隆起した蕾もぷるんっと口の中に入ってきた。こりこりした弾力を唇で味わいながら、舌でそこを押しつぶし、こねくり回す。どうして彼はこんなにも美味いのか。胸元に滲み出ていた汗に舌を這わせると、押し倒している身体がもじもじ揺れる。
濡れそぼつ蕾は光を受け、てらてらと輝いている。清一郎の肉杭は、はちきれんばかりに勃起していた。瑞樹のそこへさらりと目をやれば、同じく興奮を示している。
「ほら、いつもみたいに」
瑞樹の耳元で囁く。首筋へ軽いキスを落とし、清一郎は彼の上から身を退けた。
天井から降る明かりで、自分たちの影はベッドに色濃く映っている。
身を起こした瑞樹はこちらに背を向け、四つん這いとなった。男の肌とは思えぬ白さの尻を見て、清一郎は生唾を飲み込む。何度見ても艶やかで美しい。ふっくらとしたその形は、男が好む可愛らしさだ。
「ここ、舐められたいだろう?」
清一郎は、瑞樹の肉丘を左右に押し広げると、露わになった後孔へ息を細く吹きかけた。その途端、後孔は淫らにひくつく。
「あぁ……っ、恥ずかしいです」
掠れた声を受け、清一郎はにやりと笑う。尖らせた舌で後孔を突けば、瑞樹の尻が跳ねた。
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