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第6話 きっかけ~賢一side~

 告白は大失敗に終わったが、ライブの行方に、今後の全てがかかっている。  俺は次の日から、ギターの猛特訓をした。そしてバイトにも精を出す。ライブの日に、ちょっと高めの美容室に行き、カッコよく、カットしてもらうために。 「頑張るのは、バンドとしていいことだけどさ」  休憩中、まさやんが話しかけてくれた。 「頑張る方向を誤ると間違いなく、この間のような失態に繋がるぞ」  ニヤリと片側の口角をあげて笑う。  はいはい。告白しようとして、プロポーズしちゃった件ね。  俺がむくれていると、まさやんがさも可笑しそうに言う。 「もう少し、余裕を持って行動しろよ。落ち着いてさ」 「余裕を持っていたら、いきなりプロポーズなんかしないよ。中林さんのことを考えるだけで、いっぱいいっぱいなんだ」  ポワーンとしている俺を見て、ますます呆れるまさやん。 「相手のことを想って、いっぱいいっぱいになった経験がないから、さっぱり分からん」 「そうだよね。まさやんは、ヤル事しか考えてないから」 「お前なぁ、人を猛獣扱いするとは失礼だぞ」 「ごめん、正確には下半身だけ猛獣だったね」  にっこり微笑む俺は、してやったり。まさやんなぜか否定もせずに、ガックリと項垂れている。 「きっとまさやんにもその内、その人のことで、心がいっぱいいっぱいになるときが来るよ」  ポンと肩に手を置く。 「俺みたいに屈折している人間に、合うヤツなんて現れるんだろうかね」 「その時はしっかりフォローするから、頑張ろう?」  2人で顔を見合わせたまま、笑いかけたのだった。

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