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第12話 きっかけ~叶side~2
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ライブハウスの中、周りは若いお客さんばかりで、自分ひとりが浮いてるんじゃないかと、後ろ側にある隅の席に座った。
「いくぜ、お前ら!」
あの髪の長い子が叫ぶと、派手なドラムソロが始まる。
ギターを持った彼が、舞台袖から出てきた。その様子をじっと見つめたら、不意に目が合う。
途端に、茹でダコのように顔を真っ赤にする姿に、プッと吹き出してしまった。
分かりやすい……行動も言動も、自分の想いに実直すぎるほど素直な彼。
史哉さんといるときの俺は、いつもどこかにブレーキをかけていた。
髪の長い子が、その場を何とかしのぎ、そのお陰で立ち直ったのか、しっかりと演奏を続ける。
楽しそうにギターを弾いてる彼を、ずっと見つめ続けた――奏でられるメロディに、自然と体が揺れてしまう。久しぶりに心から笑うことができた自分を感じながら、演奏に耳を傾けたのだった。
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