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別離……そして未来へ
パタンと扉が閉まる音を聞き、後方を振り返った。彼がいないことを確認し、カバンからレターセットを取り出す。
メールで別れを告げるのは、やはりいたたまれなかったので、手紙で伝えることにしたのだけれど、なかなか筆が進まずにいた。
視線を伏せて、途中まで書いている文面を読み直す。
それは一方的に、別れを告げている文章……俺自身、史哉さんへの想いを断ち切るかのようなその内容に今は、胸を痛めることがなかった。
『叶さんじゃないと、ダメっす』
真っすぐな賢一くんの瞳が思い出される。体だけじゃなく、心まで暖かくしてくれる、彼の気持ちが嬉しかった。
「叶さん、好きです」
ことあるごとに連呼する、その言葉を言わせているのは、きっと俺のせい。だけど今すぐに「好き」なんて言ってやるもんか。言ったらどうなるか、目に見えている。すごくつけ上がって、手に負えなくなるだろう。今だってかなり、持て余しているんだから……
ひとつ溜息をついてから、最後の別れを書いた。前は絶対に書くことができなかったそれを、心を込めてゆっくりとしたためる。
さよなら……と。
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