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別離……そして未来へ2
***
短時間で簡単に出来る物をと、サンドイッチと卵スープ、サラダを作った。
それらの料理を無言で食べる叶さんを見ながら、俺も食べる。
(むー緊張する、口に合ってるだろうか……)
「さっきから何、見てるんだよ。食べにくいんだけど」
「だって……」
「とっても美味しいから」
フフッと笑いながら、そう言ってくれた。
その言葉に体の力が抜ける、良かった。……って、もしかしてこの微妙な間も、イジワルな展開だったのかも。
――恐るべし、叶さん。
「料理は、よくするのかい?」
「はい。俺ん家共働きで両親が遅くまで働いていたし、小遣いは楽器を買うのに使っていたから、外食は出来なかったんですよ。だから自宅で、よく作ってました。まさやんには、いいお嫁さんになれるって言われたなぁ」
すると、疑いの眼 で俺を見る。
「やっぱり君達、ふたりって……」
「ややっ、違いますから。叶さんまでやめて下さいよ」
「叶さんまでって、他の人にも言われたんだな」
俺は何もしていない、断言する。すべてはまさやんが、公衆の面前で怪しいことをするからだ。
今日だって――カフェスペースでの出来事を思い出し、思わず赤面する。
何だって、あんな技を取得しているんだ? 理工学部って、そんなことを教えているわけじゃないだろうな。
しかも、まさやんから放たれるフェロモン、何だあれ。男女問わずに、クラクラさせるものなのか? 質は違うけど、叶さんからもフェロモンが出ているもんな。
「何、顔を真っ赤にしてるんだ?」
「叶さんのフェロモンに、やられてる最中」
まさやんに教えてもらった技を、今晩使ってみるか。
「鼻の下3センチ伸びた、絶対にいやらしいことを考えてる」
ズバリと見抜かれ絶句する、何で顔に出ちゃうんだろ。
そんな自分の心情を悟られないように、顔をきりりと引き締めながら卵スープをスプーンでぐるぐるかき回してる間に、叶さんは食べ終わり、台所で洗い物を始めた。
勘の良い恋人を持つと大変だ、サプライズ的なことすら出来やしない。
むむぅと唸りながら、さっさと食べて、後片付けをする。
「じゃ先に、シャワー浴びてくる」
そう言って横を通る叶さんを、嬉々として引き止めた。
「叶さん、シャワーじゃ疲れはとれないよ。きちんとお風呂に入って温まって、ゆっくりしなきゃ」
俺はポケットから小袋を取り出す、入浴剤ゆず湯。さっき、食材と一緒に買ってきたのだ。
そんな俺の顔を見て、一言。
「一緒に、お風呂なんか入らないよ」
「入れなくてもいいんですっ。ただ叶さんに日ごろの疲れを取ってもらいたくて、これを買ったんですから」
疑う叶さんの手に、入浴剤を手渡した。
「そこまで言うんなら、お風呂にお湯はってくる。まったく、お節介焼きだな」
俺に体当たりしてから、風呂場に行く叶さんを見て、にんまりとほくそ笑む。
一緒に入れなくてもいい。疲れをしっかり、とってくれればいいのだ。そしたらアノ最中に、眠ることはあるまい。
「そうそう、賢一くん」
お風呂場から声がする。エコーのかかった叶さんの声。
「君が買い物行ってる間に、課題のチェックしておいたよ。間違いだらけで、採点が大変だった」
「そうっすか」
「全部、やり直しだから」
「えっ!?」
「あれをやり直すのは、一晩かかると思うよ。頑張ってね」
その言葉に絶句するしかない。
日ごろの行いが悪いから、この始末。やはり、二枚も三枚も上手 な叶さん……いつか、勝てる日が来るのだろうか。
違う意味で、今夜は眠れそうにない。
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