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別離……そして未来へ5

***  廊下の遠ざかる足音を聞きながら、ふっと目を開けた。賢一くん…… 「叶、大丈夫か?」  医務室入口にいた水戸部長が、俺の元に駆け寄ってきた。そして顔を覗き見、ギョッとする。 「な……何で、そんなに怒っているんだ?」  いつも穏やかな俺しか知らないので、驚くのも当然だろう。 「さっきも言いましたが、もうその呼び方、いい加減に止めて下さい」 「でも、俺はな」 「俺はもう水戸部長のことは、何とも想ってません。想いを押し付けられても、迷惑なだけなんです」  キッと睨みながら言ってやった。  ――負け戦はしないって!?  そもそも部長は、戦場にいない人間なのだから、話にならない。そこにいるのは、アイツと俺だけ。  アイツが想いという名の刀を振ってきたら、俺が華麗にかわす。今までのらりくらりとかわしてばかりいたけど、今度は俺が刀を振る番なんだ。 「俺のためにそんな風に怒ってくれたこと、今までなかったな……」  淋しそうに、ポツリと言う水戸部長。  俺は傍らに置いてあった、アタッシュケースを手にして、勢いよくベッドから下りた。 「これが、俺の自なんです。」 「そんな君を見ることが出来る彼は、特別な存在というワケなんだね」  自分の想いに、いっぱいいっぱいのアイツは、まだ気がついてない――どれだけ俺が想っているのかを。 「水戸部長、早く綾さんと仲直りして下さい」  いつも俺の影に、綾さんを見ていたのが分かっていた。 「今更そんな……」 「大丈夫ですよ、水戸部長の話術は、天下一品なんですから」  にっこり微笑みながら言うと、釣られて部長も笑う。どこか苦笑いだったけど。 「ここまで運んでくれて、有り難うございました。さよなら水戸部長」  きっちり一礼してから、医務室を出た。  それから急いで会社を出る、早くアイツを見つけないと――

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