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別離……そして未来へ5
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廊下の遠ざかる足音を聞きながら、ふっと目を開けた。賢一くん……
「叶、大丈夫か?」
医務室入口にいた水戸部長が、俺の元に駆け寄ってきた。そして顔を覗き見、ギョッとする。
「な……何で、そんなに怒っているんだ?」
いつも穏やかな俺しか知らないので、驚くのも当然だろう。
「さっきも言いましたが、もうその呼び方、いい加減に止めて下さい」
「でも、俺はな」
「俺はもう水戸部長のことは、何とも想ってません。想いを押し付けられても、迷惑なだけなんです」
キッと睨みながら言ってやった。
――負け戦はしないって!?
そもそも部長は、戦場にいない人間なのだから、話にならない。そこにいるのは、アイツと俺だけ。
アイツが想いという名の刀を振ってきたら、俺が華麗にかわす。今までのらりくらりとかわしてばかりいたけど、今度は俺が刀を振る番なんだ。
「俺のためにそんな風に怒ってくれたこと、今までなかったな……」
淋しそうに、ポツリと言う水戸部長。
俺は傍らに置いてあった、アタッシュケースを手にして、勢いよくベッドから下りた。
「これが、俺の自なんです。」
「そんな君を見ることが出来る彼は、特別な存在というワケなんだね」
自分の想いに、いっぱいいっぱいのアイツは、まだ気がついてない――どれだけ俺が想っているのかを。
「水戸部長、早く綾さんと仲直りして下さい」
いつも俺の影に、綾さんを見ていたのが分かっていた。
「今更そんな……」
「大丈夫ですよ、水戸部長の話術は、天下一品なんですから」
にっこり微笑みながら言うと、釣られて部長も笑う。どこか苦笑いだったけど。
「ここまで運んでくれて、有り難うございました。さよなら水戸部長」
きっちり一礼してから、医務室を出た。
それから急いで会社を出る、早くアイツを見つけないと――
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