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第23話
「…ック…ぅ…、…ちょ…っと、待っ……ンぁっ」
後孔を解そうと内部を動き回る指が1本から2本に増やされた途端、やっと慣れてきたはずの圧迫感が新たなる衝撃を与え、閉じる暇のない唇から声が溢れ出す。
体をビクつかせ、真上から伸しかかる御堂の腕を縋りつくように掴むたび、何が嬉しいのか口角を引き上げるようにして笑むその様子に、僅かながらの苛立ちが湧き起こる。
抱く方は百戦錬磨でも抱かれるのは初めてだ。と、そう知っているはずなのに、容赦なく進められていく行為。
「最初はここだけじゃイケないだろうが、今にここだけでイケるように俺が変えてやる」
愉悦の色を浮かべた瞳で睦言のように囁いた御堂は、「ここ」と言いながら後孔を犯している人差し指と中指をグリっと抉るように動かした。
「ンっ…ぁあッ!!」
快楽を求める事に慣れている体は、無自覚の内に苦しさから逃れようと自ら腰を揺らしてしまう。
御堂がワザと前立腺から少しずれた場所を選んで触れている事はわかっている。快楽まであと一歩のもどかしい感覚に、我を忘れて懇願の言葉を放ってしまいそうな自分が怖い。
それでなくとも、胸の突起をもう片方の指で強く弄られ、舌で耳朶を嬲られている状態に、己の下半身が緩く立ち上がって反応を示している事がわかる。
その内に三本目の指が後ろに捻じ込まれ、だいぶ解れてきたそこは多少の抵抗はあるものの御堂の指を飲み込んでいく。
「こっちの素質十分だな?」
「う…るさいっ」
涙の滲んだ目で御堂を睨むと、楽しそうにクククっと喉奥で笑われた。
一見余裕のありそうな御堂だったが、下腹に当たる熱く硬いモノがそれを否定していた。
完全に臨戦態勢となっている御堂のそれを知れば、意地悪い事をしながらも、俺の体の状態が整うまで待ってくれているのがわかる。
…これだから、惚れてしまうんだ…。
心身ともに感じる心地良さに、口元から熱い息が零れ落ちる。啄ばむようなキスを唇に落とされながらも、出来るだけ声を押し殺している俺の耳元に、
「…そろそろいいか?」
そんな低い囁きが聞こえた。
視線を合わせたまま微かに顎を引くだけの頷きを返した瞬間、
「…んッ…ク……ぁ…あっ!!」
片足を抱え上げられ、御堂の熱い剛直が後孔に押しつけられた。
それまでの優しさが嘘かのように躊躇いなく一気に挿入され、思わず体を上にずり上げるようにして逃げようとするも、そんな事は許されず腰を掴まれる。
グッグッと何度かの反動と共に御堂のモノが全て体内におさまった。
丁寧に解されたおかげか切れるような事はなかったものの、初めて受ける行為に痛みと苦しさで涙が零れ落ちる。
普通ではありえない場所の物凄い圧迫感に呼吸が乱れ、「ハッハッ」と荒い息が唇からもれる。
「さすがに…きついな…」
そんな声に、閉じてしまっていた瞼を開けた。
目に映ったのは、額に汗を滲ませて苦しそうな、それでも嬉しそうに見える御堂の顔だった。
「…ふ…ざけるなよ…。初心者だって言ってんのに…、最初からこれは…ないだろ」
「悪ぃな…。お前が頷いた瞬間、理性が飛んだ」
悪びれもなく言う相手に更なる文句を言おうと口を開いた。が、
「ハッ…ん…ア…ぁあッ」
突然律動を開始され、言葉は意味のない嬌声へと変わる。ズンズンと奥まで付き上げてくるそれに、もう何も考えられず体を揺らされるだけ。
未だかつて感じた事のない種類の痛みと苦しさと快楽に逃げ出しそうになる体を、御堂の肩に縋りつく事で堪える。
「雅、お前は俺のモノだ…。…っ…絶対離さねぇ」
激しく腰を打ちつけながら言う言葉は、欲望のせいか常よりも低く掠れている。その声に、脳内まで犯されていくような痺れを感じる。
奥深くを突かれるたびに、何が何だかわからない熱が体の奥から這い上がり、痛みなんてどこかへ消えさってしまった。
頭の中にあるのは、このおかしくなりそうな快楽から解き放たれたいという思いだけ。
「…ぅっ…あッ…ぁっ…、も…、イキたい」
やはり後ろだけでイク事に慣れていない体は、イキたくても後一歩のところでそこに到達する事ができず、悶える苦しみに変わっていく。
それでも激しく突き上げてくる律動は止まる事がなく、本能が理性を超え、手が自分の下半身に伸びた。
だが、願いは叶わなかった。
「…な…んで…ンぁ…っ…」
先走りの体液を零す自身の熱を触ろうとした手を振り払われ、代わりに御堂の手が俺のそれに絡みついた。
…いや…、絡みついたというより、俺がイケないように根元をグッと強く握りしめられた。
放つ事の出来ないマグマのような何が体中を駆け巡る。その苦しさに涙がこぼれ落ちた。
「…放…せ、よ…。…っあ…ン…んっ…」
体が揺さぶられるほどの強い律動に、もう体が限界を訴える。頭がおかしくなりそうだ。
「呼べよ」
「…な…に?」
腰を打ちつけながら言う御堂の低い声が、脳内に入り込んだ。
睨むように見た先では、汗を滴らせた御堂が口端をつり上げて俺の事を見ていた。
「イキたきゃ俺の名を呼べ。そして自らの口で…俺を求めろ」
「…求める…って…、っク…ぅ…ンっ」
前立腺を抉られるように腰を回され、突かれる。過ぎた快楽は、まるで拷問のようだ。
「…龍…司…、もう、許して…くれ…、あ…ッ」
「俺が聞きたいのは、そんな言葉じゃねぇ」
言葉を区切るごとに、限界まで突き上げられる凶器に、もう何が何だかわからなくなる。
「言うまで、この手は離さねぇからな」
もうプライドも理性も頭の中に残っていなかった。今はただ、この狂ったような快楽から抜け出したい思いだけ。
「…龍司…ッ頼む…、いかせて、くれ…。アンタが、欲しい…っぁあ!!」
言い終わるかどうかという所で一際激しく突かれ、それと同時に、御堂に握られていた俺の性器が解放されて強く扱かれた。
先端を指で抉られ、体内に塞き止められていた熱が一気に溢れ出す。あまりの刺激に、体が何度か震えるようにビクビクと痙攣した。
そして、「クッ」という御堂の声と共に、後孔の奥に熱い何かが叩きつけられるような感覚を得た瞬間…、それが何かと考える間もなくスゥっと意識が闇の底に沈んでいった。
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