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下校途中

 時雨の父は青山のようにたくましく、背が高く、とはいかないし、顔だって似ていないが、手だけは似ている気がした。昔から優しい父はよく時雨の頭を撫でた。それが気持ちよくて、幼いころは撫でられるとすぐに眠くなってしまったりした。先ほど青山に撫でられた時にも、別に眠くなかったのに、なぜか少しだけ眠くなった気がした。  口の中に、さっきもらった飴を放り込むと翔と共に学校を出て図書館へと向かう。  図書館では翔も本探しを手伝ってくれてすぐにお目当ての本が見つかった。本二冊を借りると、その足で近所のスーパーまでいく。 「今日は何作るの?」 「ハンバーグ」 「絶対旨いやつじゃん」  籠を手に、次々と材料を放り込んでいく。ひき肉、卵、玉ねぎ、パン粉などなど。その他にも茄子やトマト、キャベツにピーマンそしてリンゴを入れる。 「なぁ、それは何に使うの?」 「え?あぁ、それは弁当用」 「え、あれ自分で作ってんの?」 「時々ね。気分で作ってる」  翔にはそう言ったものの、本当は作る日は決まっている。翔が嫌いとか、そういうことではないが、何となく本当のことを話す気になれず、そのままレジまでいきお会計をすませる。  帰り道に買い物に付き合ってくれたお礼にスーパーで買ったアイスを渡した。翔はものすごくうれしそうな顔でアイスを受け取った。  予定より荷物が多くなってしまい、翔は嫌な顔一つせず半分持ってくれた。  アイスを食べながら歩いていると、後ろから声をかけられた。 「兄さん?」  いつも聞きなれた声が聞こえて、少しだけ肩がビクリと揺れ、足を止める。ゆっくり振り返ると、そこには予想通り、誠がいた。 「誠・・・?お前、部活は?」 「今日は学校の部活はお休み。それより、隣にいる人って翔君?」 「お!俺のこと覚えててくれたの?」 「はい、もちろんですよ。兄さんの友達ですから!」  そう言ってニッコリと笑う誠の目は一ミリたりとも笑っていない。翔はそれに気づいていないから、嬉しそうに笑って誠と話している。  時雨は何とかして誠から翔を遠ざけようと、持ってもらっていた荷物を勢いよく取る。 「あ、え?おい、急にどうしたんだよ」 「い、いや、今日はありがとう。わざわざ荷物も持ってくれて。ここまでで大丈夫。あとは誠に持たせるから。本当に、ありがと」  そう言って誠には翔が持っていた軽い方の荷物を渡し、「じゃあまた明日」といって別れた。 「・・・気を付けて帰れよ!」  後ろから、笑いながら手を振る翔に手を振り返しす。  しばらく無言のまま歩く。   「今日の夕飯何作るの?」 「・・・」 「兄さん?」 「へ?あ、ごめん。なんて言った?」    全くと言っていいほど聞こえなかった。時雨は、ものすごく緊張していた。   「今日の夕飯。何作るの?」 「あ、あぁ、ハンバーグを、作ろうかと思って」 「やった。俺兄さんの作ったハンバーグ大好き!」  そう言って嬉しそうに笑う誠の横顔を見ると、今度はちゃんと笑っていた。その顔にほっと一息つく。  家に着くまでのあいだ誠は今日学校で何があって何が面白かったとかをずっと話していた。相槌をうちながら聞いているといつの間にか家についた。  手を洗って夕飯の支度を始めると、誠も手伝うと言って二人でキッチンに並ぶ。

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