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弟とキッチン
「兄さん、これってもう焼けてる?」
時雨がサラダを用意している間に誠がハンバーグを焼いてくれていた。
蓋を開けて中を確認すると丁度いい焼き加減のおいしそうなハンバーグになっていた。
「ん、もう大丈夫。ソースは俺が作ったのそこにおいてあるから、皿にのっけたらいい感じに盛り付けして。あ、このサラダも一緒にのせて」
「わかった」
誠が盛り付けている間に使った調理器具をすべて綺麗に洗い、出来上がったハンバーグをテーブルに並べた。美浦の分はラップをかけてキッチンに置いておく。
テレビを見ながら夕飯を食べ、先に食べ終えた誠に先に風呂にはいるよう言い、そのあとに食べ終わった時雨は食器を洗う。
(明日のお弁当、何にしようかな)
明日のお弁当のおかずを考えながら食器を洗い終える。そしてまた料理を始めた。ハンバーグを作った時に余ったもので小さな種を作り、ラップに包んで冷凍庫に入れておく。その他にも簡単にできる作り置きのおかずをいくつか作りタッパーに入れ、冷蔵庫にしまった。
使ったものを片したりコンロを掃除していると扉の開く音がした。美浦が帰ってきたのだ。
「ただいま。ありがとね、時雨」
「お帰り、母さん。ちょっと待ってて、今ご飯出すから」
「いいわよ。自分でやるから、時雨はもう休んで」
「いーから。ほら、コートバッグ置いてきなよ。温めておくから」
美浦は申し訳なさそうに、でも嬉しそうに「ありがとう」と笑いながら自室に行った。リビングに戻ってくるとすでに温められているハンバーグと白米、それからスープが置いてあった。
美浦は両手を合わせ「いただきます」と言ってから箸を手にハンバーグを食べた。
「時雨」
「なに?」
「また料理うまくなったね。すっごく美味しい」
美浦は美味しそうに口を押えてにっこりと微笑む。
「今日は誠が手伝ってくれたから、少しいつものに手を加えたんだ」
「あら、そうなの?相変わらず仲がいいのね」
兄弟仲良くしていることが嬉しいのか、美浦はフフフと笑った。
「うん・・・そうだね」
美浦は何も知らない。まだ時雨の憶測でしかないが、誠は時雨を〈兄〉として見ていないことを。そして、時雨が誠のことを怖がっているということも。
しかし、時雨はそのことを美浦に言う気など微塵もない。これ以上、美浦に悲しい思いをしてほしくなどないからだ。だから美浦の前でだけでも仲のいい兄弟を演じる。
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