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まだここに

二人は笑った。雨の降る中、笑いあった。そして、お互いが好きなことの話で盛り上がった。  最近読んだ中で一番面白かった本の話や映画の話。成美は時雨の学校生活について、時雨は成美のここ最近の生活やまだちゃんと教えてもらっていない仕事についてなど。二人の最近会ったことについて話した。そうしているといつの間にか時間は経ってしまうもので、時雨のポケットの中のスマホがブブッとなった。 「あ、もう時間か・・・」 「もう学校に行く時間かい?」 「・・・もっと話てたいです」  スマホのアラームを止め、ポケットにしまい、時間など気にしないでいつまでも、何時間でも成美と話していたい。そう思った時雨は成美の方を見た。成美はいつも通りの優しい笑顔で、時雨の頭をなでる。そして、クスクスっと笑う。 「僕もまだ君と話していたいけど、でも学校には行かなきゃ。僕の代わりにいろんなことを学んでおいで。そして、僕にまた楽しい話を聞かせてくれる?」  渋々頷くと、時雨は傘を開き、東屋の外へ出た。傘に打ち付ける雨が朝よりも軽く、小雨へと変わっていたのに、時雨の足は朝の何十倍も重かった。 「あの、帰りもまた来ていいですか?」 「もちろん。むしろ来てくれると僕は嬉しい」 「・・・じゃあ来ます」 「うん。待ってるね」  そう言って公園のから出て学校への道を歩き始める。東屋の下で成美は時雨に手を振っていた。  時雨は足を止め、少し恥ずかしがりながらも手を振り、「いってきます!」と顔を赤く染めながら言うと、成美は一瞬、キョトンとした顔をしてから「いってらっしゃい」と言って笑顔で見送ってくれた。

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