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第6話

「穂積さん、おはようございます。昨日はぐっすり眠れました?」  目覚めると、浅川は穂積の頭上に座っていた。 「驚いた顔してる。何がそんなに可笑しいんです?」  浅川は穂積を閉じこめている檻の上に座り、中の囚人を見下ろす。Tシャツにスウェットといったラフな格好だ。寝巻替わりなのかもしれない。  座り心地が悪いだろうが、浅川はリラックスしているように見える。断りも無しに吸い始めた煙草の作用かもしれない。浅川が喫煙者だという事実を初めて知ったが、嫌煙家の穂積にとって彼を嫌う要素がまたひとつ増えただけだった。 「穂積さんの可愛い寝顔も見れたことですし、俺はまた戻りますね。隣の部屋にいるので何かあったら報せてください」  浅川は檻からピョンと飛び降り、ドアへと向かう。穂積は檻を殴り、浅川の動きを止めることに成功した。 「何か?」 「……漏れそうなんだ」  自分でも顔が赤くなったのがわかる。この歳にもなって排泄の許しを相手に乞うはめになるとは夢にも思わなかった。 「手首は縛ったままでいいから、頼む」 「俺に貸しは作らないほうがあなたのためですよ。まあいいけど。で、考えたんですが、あなたがすっきりしたいなら、俺もすっきりしないと不公平ですよね」 「僕は何をすればいいんだ……?」 「俺のものしゃぶってみます? 今から抜こうと思っていたので丁度いいですよね」 「……何だって?」  穂積は戸惑った。浅川の言っていることはわかるが、その行為を穂積に強いる意味がわからない。だが浅川を怒らせたくない。  今は携帯していないようだが昨晩見せつけられた鋭いナイフを穂積は忘れられない。しかし尿意も限界に近づいていた。  困惑の表情が出ていたのか、浅川は突然噴き出し、ケラケラと笑った。 「嫌だなあ。冗談に決まっているじゃないですか。今はまだしませんし、させませんよ。だって危ないの俺だから」 「連れて行ってくれないのか?」 「その場でしていいですよ。俺としたことがすっかり忘れていました。今度ペットシート買っておきますね」  穂積の扱いがペット以下になるまで時間はかからなかった。

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