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第12話
起きてすぐ、覚醒しきる前に浅川からペットボトルの水を手渡され、穂積は浴びるようにそれを飲んだ。喉がカラカラに乾いていたのである。勢い余って床にこぼしてしまったが、浅川が咎めることはなかった。
しばらくすると鉛のような眠気が穂積を襲う。以前にも体験した違和感。気づいたときには遅かった。上体を起こしていられなくなる。途切れそうな意識を保とうとするが、体内を駆け巡る薬剤の力は強く、やがて穂積は檻の中で崩れ落ちる。
「浅川……」
穂積はくっつきそうになる目蓋を何とか押し留めて浅川に問う。
「何を、飲ませた?」
しかし浅川は何も話そうとはせず、穂積の手からこぼれた空のペットボトルを回収し、部屋を出ようとする。
「…………行かないでくれ」
暗い靄が穂積の意識を取り巻く。呼び止めた浅川の顔はどこか憐れんでいるように見える。
――お前がここまで追いつめたんだ……。
穂積の意識はそこで途絶えた。
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