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第3話
「なーなー梓馬、今日も執事の仕事するのはわかってるけど、遊べねーの?」
「今日は、時雨様の帰りが遅い日だから少し遊べる」
婚約者に会いに行った時雨様。
(真希様なんていなくなっちゃえばいいのに……)
そう悪態をついていると、
「何ムスッとしてんだよ。そんなにお前は時雨様が好きすぎるんだよ。お前見た目いいんだから、女と遊べよ。いい加減主従の間柄で済ませたらどうだ?」
「やだよ。僕は時雨様のモノなの。関係ないでしょ」
「お前女子に人気あるのに仕方ねーヤツ」
なんとでも言えだ。
今は学園のお昼。この学び舎は榛家が代々引き継いでいる『雅ヶ丘学園』で、学生のターゲットはお金持ちのお坊ちゃまやお嬢様とその執事やメイドが通う学園とされている。
時雨様はその学園の理事長を任されている。
「んでどうしたんだよ。今日は一段と可愛い顔を膨らませて」
「別に~」
はぁ~とため息を付く朱鷺(とき)。
朱鷺は白銀家のお坊ちゃまなのだけど、何故か僕を友人として扱ってくれて、遊び相手にもなってくれる。親友とも言える。
朱鷺は僕と時雨様との間柄を知ってるし、晴人の思いも知っているしで何かと相談事をさせてもらっている。
身分の差を感じさせないところがいいやつですごく僕は頼りにしているのだった。
「朱鷺君ちょっといいかなぁ?」
「んあ。って九条院さん、どうしたの?」
驚いて声が裏返っている朱鷺に苦笑する僕。わかりやすいなぁなんて思いながら微笑ましく会話を聞いていると。
「朱鷺君、今日空いてる?」
「勿論だよ!」
何!? ゲーセンは!?
「晴人様のお誕生日もうすぐでしょ? 一緒にプレゼントを選びに行ってほしいんだけれど」
うは。可哀想なヤツ。
笑顔のまま固まってる……。朱鷺のヤツ嬉しいのに内容が内容だけに素直に喜べないようだ。
「えーと僕は晴人の好みをしらないからなんとも言えないよ。晴人にきいてみたらどうかな?」
思わず、笑いそうになるのを我慢してしまう。すっごい喜んでた顔がいまじゃぁ引き攣っている。仕方ないといえば仕方ない。
学校では『晴人』はまるで、太陽みたいな存在と呼ばれていて、人気がある。
あのバカのどこがいいのだろうと不思議に思ってしまう僕だけど……。
「ええ。聞いてみたんですけど、イラないって言われちゃって。でも何か差し上げたいなって思って。どうにかならないかな?」
「それなら同じ家に住んでる梓馬にきいたらどうかな?」
はぁ?? こいつ僕を巻き込みやがった。
「あ、そうだよね。梓馬君。どんなのがいいかなぁ?」
「僕は晴人様の執事じゃないからわからないけど、お弁当あげてみたら? 手作りの」
あいつよく食うし。
「手作り!? 私できるかしら?」
「お、俺が味見しようか?」
足掻いてる足掻いてる。
「うん! お願いする! ありがとうね朱鷺君」
「おう! 任せとけ!」
やがてお礼を言った九条院さんは友達の中に溶け込んで戻ってしまう。
「朱鷺にしては頑張ったんじゃないの?」
「くそぉ~晴人のやつ。ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ!!」
「はいはい」
あいつでもモテるんだなぁ。どこがいいかわからないけど。
そんなことよりもだ。隣で燃え立つ朱鷺をどう消火しようかと悩んでいた。
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