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第5話

「待っててくれたのかな? ほら、起きなさい。私の可愛い梓馬?」 「んん?……しぐ……れさ……ま?」  段々と意識が覚醒していく。あれ? なんで僕ここにいるの? 時雨様のベッドに。……あ――! 「時雨様申し訳ございません……直ちにベッドメイキングをしますのでおま……んん……ふぅ」  触れるだけのキスでも効力は十分過ぎた。僕はいつの間にかまた泣いていて、時雨様を困らせていることに間違いない。 「私の知らないところでどうか泣かないで。真希とは結婚なんかしないから。私には可愛い君がいるのだからって言っても言葉ではわからないかな?」 「ぅ……ぐす、ぅぅ……っひく。し、し……ぐれさまぁ」  ッギュ。 「机の下に隠れて何をしてるかと思えば、てっきり私のためかと思ったのに、晴人から逃げる為に隠れていたなんて」 「な、何故それを知って……あ、そっか……ごめんなさい」  僕は時雨様の部屋の鍵を持っていて鍵を開けて入ったけど、鍵を閉めるのを忘れたわけだ。しまった……。 「……時雨様、勝手に入って怒っていらっしゃることわかってるのですが、晴人様がしつこく、逃げる場所が無くて……」 「真希と私の様子を見ていたの?」  僕は困惑する。わざとじゃないにしろ、主のプライベートを覗いてしまったのだから。 「時雨様、お願いですから僕を、貴方様以外のモノにしないでください。僕は時雨様だけのモノでありたいんです。お願いします。嫉妬はしてしまうかもしれませんが、奥様を持たれてもです。」  黙り込む時雨様。僕をじーっと見つめやがて、ベッドの上へ腰掛けるとゆっくりと近づいてきて、そして優しいぬくもりをくれた。 「梓馬は本当に私の心をくすぐるのが上手だね」  僕のおでこにキスを落とすと、 「いいよ。最高に可愛がってあげるから。明日は足腰が立たなくなるぐらい抱かれるの、覚悟、しなさい」  僕は感動に身を震わせ、時雨様の腕の中で何度も頷いていた。

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