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第7話
なんだろう……?
「やめてください。 気持ち悪いです。離れてくれませんか?」
これは――。
まだ、榛家の屋敷に来て一週間も経たない頃だ。あんまり感情を表に出さなかった時だな。
そういえば、僕、最初は時雨様ですら、受け入れられなかったんだよなぁ。
それをあんなによく構ってくれて、今の僕になったものだなぁと……。
これは夢? 微睡みの中に居る僕は変に冴えてて眠りについているのかわからないけど、この映像は過去なのだろう。
(だって今の僕は時雨様の虜だし)
「いきなり何をなさるんですか? 主様だからと言って不意に抱きつかないでください。とても迷惑――あっ! だから、やめてっていってるじゃな……んん、ふぅ……んんくちゅんふ! ……ふぁふっ!」
でも必ずキスをされるととろーんとしちゃってた気がする。
キスで落とされたと言っても過言ではないほど、キスの上手な時雨様。
少し妬ける。誰と……そんな情熱なキスをしたのか聴きたいぐらいだった。でも素直になれなかった僕は事あるごとに怒って、いつもぷんぷんしていた気がする。
その頃はまだ、晴人様とも仲良くしていて、お土産だって言って僕の好きなお菓子をくれたりしてたな。懐かしい……。
「時雨様は何考えているかわかりません。僕に干渉しないでくださいっ! だからくっつかないでくださいって言っているでしょう! キスで落とそうとする――だめです! 近づかないで!」
そんな事で怒らなくてもいいのに僕ったら。
「時雨様……僕は独りぼっち、嫌いです。そんな事言わせる様になったのも全部全部時雨様が悪いんです……僕には時雨様しかいないんですよ!」
ひと月程経過した頃だなぁこれは。段々と言動からトゲが無くなっていってる……。
こんな僕も居たなぁ……。淋しさをすごい堪えてたなぁ。
「時雨様、僕、独りぼっち嫌です。一緒に居てくれないとその……こんなに時雨様のこと考えるようになったのは、時雨様がちょっかいだすから! だから……もういいです。知りません!」
この頃に至っては、感情的になりやすい僕だったし。いつからか、心に時雨様がいて、それが不思議でたまらなかったなぁ。
「梓馬……私は心の底から君を、梓馬を愛してるから、すがりついてないてもいいんだよ? ほらおいで? 愛してる。梓馬はどうなのかな? 梓馬に触れたいってずっと思ってたから……これ受け取って? いつか私は君を噛んでしまうと思う。君の承諾なしにかもしれない。それまではこれをつけて絶対に死守して?」
あ……僕のつけてるチョーカー……この時受け取って……結ばれたんだなぁ感慨深い。愛してるって言われて嬉しくて嬉しくて泣いたなぁ。
初めて抱かれた時は痛くって涙浮かべて耐えながら段々なれていく体に不思議がってた僕。……今でも『時雨様のモノ』を直視するの恥ずかしいけど、あの時はもっと恥ずかしすぎて、愛しさは湧いても、溢れ出る感情が大きすぎて僕がすごく戸惑ってた頃だ。
全ての世界が時雨様になった時僕はやっと素直に時雨様を心の底から受け入れ、尽くしたいって思ったんだった。
今は大好き過ぎて忘れてた……。
ああ……なんだかいい気持ち。夢に堕ちていく――。
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