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第9話 ※晴人

 僕と時雨様の関係を知る執事長は優しく『今日もしっかり勤めなさい』というと僕は廊下の掃除を始めた。  花瓶や絵画を割ったり、台無しにしないように慎重に。 「お前、また昨日も時雨兄さんのところにいたのか?」  背後から機嫌の悪そうな声がすると思ったら、晴人様が睨んでいる。 「そうですが何か?」  気にせずタイルにワックスがけをしている僕に近づくと抱きしめてくる。 「やめてください。やめてくださいったら!」 「兄さんだけじゃなくて、俺にもしろよ。同じ主だろ」  あまり人が通らない事をいいことに耳を舐めあげる晴人様。 「やぁ……やめてください」  思わず僕は大きな声で言うと少しは驚いたのだろう、彼はとっさに手を緩めたのをいいことに抜け出し冷たい目で見据える。 「なんなんだよ。お前の身分で選べると思うなよ。お前は奴隷なのわかる? 性奴隷。兄さんにいいようにされてるだけだよ」 「そうかもしれませんね。それがどうかしましたか?」  そんな返答が帰ってくるとは思わなかっただろう晴人様は面白くなさそうな顔をするけれど、僕が無視をし、掃除を始めるとむしゃくしゃしたのだろうか、僕の手を引っ張り無理やり壁へと押しやる。そして、執事服を乱そうとしている。 「や、やめ」  ありったけの力を有しても抵抗が成り立たない。落ち着かない胸に押し込まれた僕は顔を背け涙目になる。 「梓馬、お前は俺のものになるのいい?」 「嫌です! 離して!」  既(すで)にシャツの下に手を入れ、僕の乳首をいじり始める。 「嫌なのに感じてるじゃないか。素直だな口とは違って」  キスだけは避けたい。そんな純情な感情は無視するかのように唇を貪られる。 「ちゅ、はぁ、んん、んちゅれる」 「ちゅ、――っつぅ……お前俺を怒らせたな。噛むことなど許した覚えはないぞ」 「気持ち悪い……」  僕は手でゴシゴシと唇を擦る。そんな事をしてもキスと言う名の刻印は消えない訳で……。乳首を摘まれ、甘い声を挙げる僕を良しとして、  耳元で『可愛がってやるよ』と一言言うと乳首をぺろペろと舐め、僕は感じてしまう僕を呪った。  アマガミされたり、転がされたりして呼吸が荒くなる僕だけど、体の相性はそんな良いというわけではないようで、というよりも、時雨様とはだいぶ経験という積み重ねが足りない。 「あぁ……ぃゃ……やめ……て、はぁ……はぁ」  心が乗らないままされる愛部は気持ちの悪いもので、いつもなら、時雨様に触られただけですぐに勃つペニスは無言。 「はしたない声あげてるじゃん。体は素直だな。俺のテクニッ――」 「何をしているだい?」  ひどく冷たい声をかけられ、僕は救われたのだとわかると、晴人を突き飛ばし身支度を整える。  涙は止まらないけれども。 「私の梓馬に何をしているんだい?」 「執事調教」 「晴人は強引だね。おいで梓馬」  緩まった腕からすり抜けると晴人様より背の高い安心する腕の中に収まった。  ガチガチに固まった体が嘘のように解(ほど)けていく。 「梓馬にコワイ思いをさせるんじゃないと何度言ったらわかるんだい? 晴人は」 「そいつ感じてたぜ。淫乱だから兄さんじゃなくてもいいじゃないの?」  僕は何も言えずそのまま『ッギュ』と抱きつく。 「こっち向いて?」 「は、はい――んん。じゅる、んちゅ、ふぁふぅん、れる」  時雨様は見せつけるように僕の唇を味わう。体が浄化されていく。落ち着く……。  いつの間にか首に腕を絡ませていた。 「こーゆー事。自然と手を回してくるし、トロンと目がしちゃうの。梓馬は正直なんだよ?」 「ふん。兄さんだって最初の方は手ひどく拒否られてた癖に。俺だっていつかそいつが自分からしてくれって頼ませるぐらいになってやるし」  負けじと言い返す様は本当に、情けないというか、意固地というか……。

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