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第10話
「いいなぁ~時雨様に晴人様にと愛されるあずちゃんは」
晴人様の専属メイドである、都(みやこ)さんは夢見がちな大学二年生の優しいお姉さん。
いつも朗らかで僕の愚痴やら何やらを聞いてくれるありがたい存在。
相対して、都さんの双子の片割れの弟に当たる京(けい)さんは物静かで、どちらかと言うと、男だけどあまり男を感じさせない中性的で思考も結構大人なんだけど……。肉体は小柄っていうアンバランスなところが面白い。
「あずは特別なんだろう。あの時雨様ですら夢中になってしまうぐらいなんだから」
「そうよねぇ、晴人様はいつも笑顔だったのに、あずちゃん来てから難しい顔もなさるようになったし。あずちゃんはいいわねぇ」
僕の前ではいつもなんか心に一物あるような顔ばかりしている晴人様。一番最初にお会いした時は、今では考えられないような晴れやかな笑顔を浮かべ、名前の通りのスカっとした太陽みたいな人だったのになぁ~と。
「良くないよ。僕は時雨様だけのモノなのに……」
「ご機嫌斜めね、何かされたの?」
「別に」
昼間されたことを思い出すと少し嫌悪感と罪悪感がひしひしと湧いてくる。
僕はいつだって時雨様のモノでなくちゃならないのに……。
「そろそろよねぇ~」
「都さんは何をそんなに待ち焦がれてるの?」
「そりゃぁ、誕生日よ! 絶対誕生日の夜に噛まれて見せるんだから!」
「都はそればっかりなんだな。少しは梓馬を見習え……と言いたいけど、どちらも主バカだからなんともいえないな。それに晴人様はあずを噛みたいって思うだろう」
(そういえば、晴人様がもうすぐで誕生日だ……差し上げるものはないけど、だって、何が欲しいかって聞いたら絶対に僕って言いそいうだし。あ、じゃぁ、料理でも……)
「本当に都さんは晴人様が好きなんですねぇ」
「ええ、そうよ、あのやんちゃな笑顔がたまらないわ。でもあずちゃんにご執心なのよねぇ。ずるいわ! あずちゃん噛まれないようにしてね?」
「はーい」
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