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第17話

「誕生日おめでとうございます。晴人様」  僕は手作りのスイートポテトを渡すと、他の従者もこぞって誕生日プレゼントを渡す。  僕はちゃんと焦げ目のついたスイートポテトを焼いた。うまくいったと思う。  晴人様は嬉しそうな顔で僕が差し上げたスイートポテトを食べて食べさせろと言って来る。  なんていっても、晴人様の為の席だから、僕は時雨様をちらりとみるとおすまし顔でみている。 (ぅ、時雨様のお父様やお母様までいるんだから覚悟を決めて……!) 「美味しいですか? 晴人様」 「今日は素直なんだな。美味いよ。イケる。母様! 梓馬、料理もできる様になったみたいだよ」  にっこり微笑む時雨様と晴人様のお母様にお父様。  だけど、僕は嫌な予感がばりばりする。  まだケーキが運ばれてきていないので、真っ暗にはなってないけど、何か企んでる。そんな気がする。  僕はできるだけ時雨様の近くに寄ろうとするけれども、晴人様は僕の話を延々としている為、話の輪は必然と僕に来るわけで、端っこにすらいかせてもらえない。 「そうそう、梓馬君。今度から晴人の専属執事として働いてくれるかしら?」 「義母上、梓馬は私のです。私の意思を考えて言っていただけますか? 反対です。梓馬は嫌がる」  し、時雨様~。  感動しているけれども、 「ふむ。時雨、お前は婚約者に恥をかかせたそうじゃないか。挙げ句、花を散らした。榛家に泥を塗ったようなものだ。もう一度チャンスをやろう。だが、梓馬君は晴人の専属になってもらういいな」  僕は血の気がひいた。  まるで、冷水をいきなりかけられたような、ひどいいじめにあっている気分で、立っているのも辛い。僕は時雨様付きでいたいのに……!  この仕打ちはひどい。本人である僕には選ぶ権利すら与えられないなんて。 「ですが、父上、不義理でできた晴人を甘やかすのはわかりますが、誰のせいで私の母親は死んだと思うのですか? 貴方のせいですよね。父上。自分のした事を忘れ、身勝手に振る舞われる方がおかしいと思うのですけれども?」  え? 晴人様と時雨様は半分しか血が繋がってないんだ……。 「な……時雨。お前はこの私に逆らうのか? 家を出ていってもらっても構わないのだぞ」 「ですが、父上今の経営は全て私の手中にあることをお忘れなく。この家が無くとも私には生きていく術があります。逆にいえば、私が居なくなればこの家は……わかりますよね? 父上」  わなわなと震える当主様に僕はなんと声がけをしたらいいかわからなかった。ただ、時雨様は本当に僕を手放したくないのだということがわかって、嬉しいやらなにやらで涙がでそうだった。

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