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第19話

 僕は一週間程寝込んで、その間都さんがお世話をしてくれて、無事発情期を乗り切った。都さんは優しいので大好きだ。時雨様の方が好きだけど……。 「あずちゃん、起きて。大変なの!」 「んん……? 都さん?」 「京が消えちゃったの!」  普段の落ち着きようから察すればわかるけれど、まだ、ボォーっとしている為頭に言葉が入ってこない。  ケイサンガイナイ? 「ぅ……それは本当ですか?」  都さんの隣には晴人様もいて、苦い顔をしている。 「梓馬お前噛まれたのか?」 「わかりません……多分噛まれてないとは思いますが……」 「晴人様、ちゃんと京への責任とってくださいね。私は晴人様付きをやめますので、京についてもらってくださいね。番なのですから」  晴人様はくしゃりと顔を歪め、一言、『わかってるけど……』歯切れが悪い。 「何騒いでるの?」  呑気な声で話しかけてきたのは消えたはずの京さんだった。  なんでも朝一番に時雨様に呼ばれて、晴人を頼むと言われたらしい。それで、晴人様にお使えするにあたって、色々考えた末、花を買いに出掛けていたらしい。 「都ごめんな。でもこれはΩとαの宿命だから。晴人様この花をどうぞ桔梗の花です」 「う、受け取れない。俺は梓馬がいいから」  まだそんな事をいうのかと唖然としていると、  パシンッ! 「な……何をする都! 主に対して……」 「人間のクズに何を言われてもいいわ。あずちゃんは時雨様のものなのだし、番に選んだのは晴人様なんだからちゃんと責任とりなさいよ。それでも榛家の子供なの?」  口をパクパクさせている晴人様。  京さんはクスリと笑って、 「そういう一途なところも好きですよ。晴人様。でも、晴人様は僕を噛みましたよね? 責任とってくれますよね?」  にっこりと笑顔で笑っている京さんは、痛々しい程健気で、純粋に晴人様を思っているのが伝わってくる。  晴人様はというと、パニックに陥っている。そりゃそうだ。物静かな京さんがこんなにも自分から主命を果たそうとしているわけで。 「今日のところは受け取っておいてやる。京、都以上に頑張れよな。じゃないとすぐに首にするからな」  そういうと顔を真赤にして花を握り締めて部屋から出ていってしまった。

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