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第23話 晴人side
「おい梓馬……! お前なぁ……」
名前を呼んだだけで、体をビクリとさせる梓馬。仕方ないか、俺が今まで梓馬をいじめてしまった部分もあるし。
「なんでしょうか? 晴人様……。あっ!」
「??」
なんだ? 俺に惚れたとかなんてな。ありえないけど。
「そのブレスレットかっこいいですね!」
ああ、京がお礼にくれたやつか。結構自分でも気に入っている。シンプルなデザインにドクロのワンポイント。いい趣味をしている。
京の対応に慣れてきた俺は梓馬をいじってやろうとすると、
「京さんととっても仲良しなんですね! 京さん、そのブレスレットかなり悩んでいて、都さんにきいていました。僕も見習わなくちゃなぁって。なんて。どうしたんですか?」
にっこりと笑顔が見れただけで幸せか……。いつもなら怯えてすぐ逃げ出すのに、どういう気持ちの変化だろう。
いや、俺が変わったのか? 京が執事になってから、なぜか心が穏やかになった。なんでだろう? 自分でも不思議なのだが、梓馬があんなに『好き』だったのに今は気持ちの整理がついている。
「梓馬、あのな、俺……」
「なんですか?」
すごく言いにくい。すごーく。でも心の整理のためだ言うしかない。
「梓馬のことすっごい好きだった。でも過去形になってる自分が居て、すごく不思議なんだ。梓馬が笑ったら嬉しいって思うけど、前みたいに襲いたいとか思わなくなってて。随分と意地悪したなぁって思って、ごめんな」
案外素直な気持ちを言えたかもしれない。
そういうと、不思議そうな顔を一瞬見せたが笑顔で、『いえいえ』というから、ちょっとからかいたくて、
「なぁ、最後にキスしていいか? 最後のキス。お前の事諦めるためのキス」
「えっ!? だめです。だめですったら!」
若干俺も何を自分で言ってるんだかわからなかった。でも、したいという欲求が働いてしまった。したいと思ったら何が何でもする。俺の生き方だから。
「いい子だねー梓馬―動くなよ!」
「嫌ですっ! や、やだぁ!」
「何をしてらっしゃるんですか? 晴人様?」
薄ら寒い笑顔を浮かべる京。どうしたんだ?
「今大事な時なんだ。京、お前も手伝え。これは俺の中での決着なんだ」
「ただ単に、あずにちょっかいかけてるとしか思えないのですが……」
ちょっかいはかけてるけど、本気も本気。だって、初恋をさようならしなくちゃならないのだから。この屋敷に来た時からずっと好きだった。
時雨兄さんよりもずっとずっと思っていたのにっ!
「はぁ~キスすることに何か意味はあるんですか? あずは嫌がってますよ? 無理矢理はだめです。私がかわりになりますから」
「梓馬じゃなきゃだめなんだ! 梓馬お願いだ。本当に最後だから。フレンチだから!!」
梓馬は嫌がっているのはわかるんだけど、京に悪いから。
梓馬は考えている。そして。『ホントに最後ですよ?』と言ってくれる。
俺は梓馬を引き寄せ……ああ、だめだ。梓馬可愛い。目を閉じてされるのを待ってるのが愛おしい。でも男に二言はない。
「ッチュ」
俺はすごく頑張った。よく我慢した。これ以上なくらい。愛していた梓馬への思いを断念しなくてはならないのだから。
「晴人様こちらをむいていただけますか?」
余韻に浸る間も与えられず、俺は梓馬を離れ京の方を向くと京は、俺に抱きつき、ディープなキスをかましてきた。
「んん……!」
蕩けるようなキスをされて俺は思わず、京を抱きしめていた。京は首に腕を回し、俺を離すまいとしている。
なんだ? 梓馬とキスしたよりもずっとずっとドキドキする。京の顔をまともに見ることができない。
赤くなっているだろう顔を隠しつつ、俺は、とっさに逃亡を図った。
……こんなキス知らない。
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