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第24話 晴人side
戸惑いが隠せず自分の部屋に戻った後も、心臓がドクンドクンと言っていた。
(梓馬とキスしたよりも何億倍も愛おしいなんて……なんなんだこの気持は?)
悶々としながら俺は梓馬とのキスより、京とのキスのことを思い返して、唇に触れて甘いひとときを過ごしていると。
ノックする音がした。こんな時に誰だよ!? と戸惑い、怒りがこみ上げてくるものの、時雨兄さんだったので部屋に招き入れた。
「兄さんごめん、梓馬にキスした。でもこれは決着のキスだから安心して。もう梓馬は狙わないから」
「梓馬が様子が変だっていうから来てみたら、晴人はアンニュイだね。何か悩みかな?」
兄さんは優しい口調で俺に話しかけてくれる。
俺は心の内を全部話してしまおうと思ったが、なんだかそれじゃぁ悔しい。
けれど、兄さんは俺の心を紐解くように、まるで何でもお見通しだと言わんばかりに。
「京が頭からはなれないんだろう? お前のことだ、京にキスをされてパニックに陥った……違うかい?」
「違う。ただ単に執事の分際で俺にキスをしてきたのが許せないだけだよ」
はぁーと兄さんは溜息を付き『素直じゃないな』というと。
突然兄さんは俺にキスをしてくる。
「――ん。ちょっとまってよ兄さん! 何するんだよ!! 俺は兄さんからされても嬉しくなんか……あ――」
「ズバリ晴人は京にキスされたことが嬉しかったわけだね?」
「そんなんじゃない! ただ、びっくりしただけだよ」
思わず声を張り上げて否定の言葉を紡いでしまう。思ってもみないことを言っているのは確かかもしれない。俺、素直になれない。
梓馬に『好き』を持っていかれてたから気持ちの入れ替えができない。
「梓馬とのキスはどうだったの?」
兄さん怒ってるのかな? 言い方が優しいけど。
「梓馬は……梓馬は特別だ。あいつは可愛いんだ。でも京がいるから諦めないとって思って……」
尻すぼみになる言葉に、時雨兄さんは苦笑していた。
「梓馬はおいといて、京の為に変わろうと思った、そうだね?」
「そうだけど……。梓馬が好きって感情が捨てきれないんだ。あーもう。葛藤してるんだよ。これ以上ないぐらい! 京も可愛いし、話してみたら面白いヤツだし、あいつ俺の好みを把握してくれるし……。わかんないんだよ。この思いがなんなのか!」
自分の思いを吐露してしまう。だってわからない。嫌、わかりたくない。
梓馬の事が好きな自分が一番好きでいたかった。
でも掻き乱されるからどうしていいかわからない。
「だってさ、京」
「え!? な、なんでいるんだよ!?」
頭がおっつかない。どうしたらいいんだろう。
俺、……何がしたいのかすらわからないのに、こんな独白聞かれて恥ずかしい。
京は部屋に入ってきて、無表情で佇んでいる。
それが辛いと感じるのは何故?
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