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第37話

 あれ、ここは何処だろう?  僕は……ぴっとりとくっつく時雨様に気づく。僕は怖くなってしまった。  正直、男の人は怖いけど、時雨様は昨日抱くのをやめてくださった。  僕が嫌がっているのをわかってくれて、猛っているのにも関わらずやめてくれた。  少なからず僕に、好きという気持ちを持ってくれているのがわかった。  でも怖い。  中性的なお姿をしてるけど、握力だって僕より強いし、抱きしめる強さだって強い。  僕はもう誰にも抱かれたくない。  穢れてしまった体には触れて欲しくない。  だって汚いもの。  あの時、心底落ち込んでたから、抗う元気がなくて為されるがままにされてしまったけど。良くなかったなって思った。気持ち悪い。首絞められたり、噛まれたりされて恐怖だった。  僕は怖がりなんだなって思った。  でも、時雨様は朱羅さんという人のことを少し語ってくれた。でもそれはすごく嫉妬してしまうけれど、僕を今は愛してくれていると言ってくれたことが素直に嬉しかった。  相反する気持ちをどう処理していいかわからない。  怖い気持ちが上回ってしまっているのが現状で、穢れた僕は果たして榛家に居てもいいのだろうかと頭を悩ませた。でも、居場所になって欲しいと言われて、少しだけドキドキした。  でも僕の感情はあまり表には出てくれなくて、何かが阻んでいるみたいに僕は大はしゃぎもできずただ、少しの喜びを感じていた。  時雨様の近くに居たいとは思う。こんなにも愛してやまないのに怖い。  僕はそういえば、『番』になったんだ。  こんな僕でいいのかな……。  寝ている時雨様の髪を優しく救うと見られていないからキスを試みた。  少し心が動く。愛おしいと。  ペッタリとくっついた体はお互い何も着ていなくて恥ずかしいけど、時雨様の体はしなやかで細いのに、どうしてあんなに力強いのだろうと不思議に思ってしまった。  この腕を離すべきか離さないべきか。僕は迷った。  でも僕が選んだのはこのまま、平行線。 『番』になっても、僕の心は戻らない。決めたから。  穢らわしい体を差し出すことは出来ない。  やがて時雨様が起きる。どうするんだろう。寝た振りでもしようか。でももう少し見ていたい。 「んん、あ、ずま?」  寝ぼけていらっしゃる。手探りで僕を抱き寄せ顔を引き寄せキスをしようとしている。  ……拒むべきだろうか? 「梓馬愛してる。んー」  そんな顔されたら拒めないよ。 「んちゅ」 「梓馬おかえり。ごめんね、無理をさせてキスも嫌だっただろう。でも、抑えられないんだ。キスはしてしまうかもしれない。ちょくちょく」 「……」  じーっと時雨様の目を見ていると綺麗な朱色の目をしているなぁとまじまじと思った。  時雨様は更に体をピトっとくっつけてきて僕を大切に抱きしめてくれる。  それだけで幸せ。抱いてもらうなんてこと出来ない。 「近い未来に君を抱けるその日が車で毎日一緒に寝よう。じゃないと君は逃げてしまいそうで 怖い」 「専属の執事では無いのでそれはできません」  本心からは言ってないけど、それとなくピシャリと言っておくと、 「だーめ。『番』になったんだから一緒に居ないとだめ。専属の執事に復帰してもらう」 「だめです。ぼくはけ――」 「穢れてなんていないよ。とても綺麗だよ。君の魂は。君の体も。君の可愛いその乳首も。あー目の毒だ。襲いたいのに遅えないっていう辛み。どうしてくれよう梓馬、宣戦布告させてもらうよ。君は私に抱かれたくなる。以上」  とんだ戦線布告で僕は参ってしまった。でも負けるつもりはない。僕の意地にかけて。

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