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第38話

「あずちゃーん! おかえり! 昨日の夜帰ってきたんですって? どうして起こしてくれなかったの?」 「都それは、言っては行けないと思うぞ」 「時雨様のせいなんだから時雨様がいけないんじゃない。全くこーんな可愛いあずちゃんを執事専属から外すなんて気がしれないわー」  というと、僕を『ッギュ』と抱きしめてくれる都さん。  暖かい。都さんはいいなぁ~ふわふわで。 「まぁ、都の言うことも一理あるが、帰ってきて嬉しいぞ」 「ありがとうございます」  にこにこと笑えてるかな? 僕。 「あずちゃん、今心が荒れてるのよね。にこにこって無理にしなくていいのよ? あずちゃんはあずちゃんらしく。ね?」 「そうだぞ。あず、お前はおまえらしくだ」  学校に行くのは休んでいる僕。  二人は今日は出る授業が無いため僕にかまってくれる。 「そうそう、いっていいのかわからないけど、あのバカ、時雨様の寝込み襲ったらしいわよ。それで、時雨様の専属を少しの間してたのよ。でも、あずちゃん帰ってきたからもうおわ――」 「僕は時雨様の専属にはならないよ」 「「え!?」」  二人して戸惑いの声を上げる。 「それって本当ですか? 僕の恋を応援してくれるって事ですか? ですよね? ですよね?」  なんでいるんだと思ったのだけれども、僕は、微妙な気分だった。いずれ時雨様は僕に飽きるだろう。その時に相手が居たほうがいい。応援したほうがいいかな?  心では応援しろといっているのだけれど、口から言葉が出ない。 「まぁ、邪魔しても無駄ですけどね。この間僕、時雨様のモノをお口の中に入れてフェラしていかせちゃいましたから」  それを聞いた僕は時雨様可哀想だなぁと思ってしまった。  時雨様は本来、そういう事は好きな人とじゃないと出来ないと言っていたから無理やりなんだろうなぁと。  冷静に考えられている自分が怖かった。普通だったら膨れてただろうなぁと思うと、心が薄れているのかなとおもってしまう。 「それは君が勝手に寝室に入ってきて勝手にしたことだろう? 梓馬にあることないこと言わ ないでくれるかな?」 「気持ちよさそうにしてましたよね?」 「全然。歯は当たるし、舌使いは下手だし、梓馬に比べたら天と地の差だね」  成さんはしょぼんとしていた。仕方ない。 「成さん、既成事実さえ作ってしまえば、こっちのもんなんですよ」  それを聞くなり時雨様は少し淋しげな顔をなさっている。僕じゃ務まらない役だから、せめて僕が居なくても気持ちよくなれるようにって思ったのに……。  それと同時に、心のどこかで、本当にそれでいいの? 本当に? と囁きかける声がしたような気がしたがそれはおいといて。 「時雨様、僕諦めませんからね! 時雨様は僕の王子様なんです。僕が射止めます。ハート頂くので覚悟していてくださいね」 「鍵をかけるから平気だよ。それに隣には梓馬がいるから絶対入ってこないように」 「そんなぁ~」  可愛い声を上げるけれども時雨様は決めたら絶対にそうするから僕も覚悟して臨まなくちゃ。 「時雨様僕は専属じゃないんですから成さんにしてもらってください」 「当主の言うことが聞けないというのかい?」  僕は面食らったけれども、言い返す。 「次期当主の間違えではないのですか?」 「梓馬、私はもう当主になったんだよ。残念だったね」 「時雨様のベッドの横に布団を敷いて寝ます。僕の嫌がることはしないですよね? 時雨様」  時雨様は僕の事を引っ張りそのままの腕の中にしまいこんでしまう。ぶるりと怖さがやってくるのと同時に、安らぎも来るから不思議。 「強引にはしないとはいったけど、一緒には寝てもらうよ。なんて言ったって『番』になったんだから」

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