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第39話

 それを聞いた、都さんと京さんはびっくりして項を見てくるけれどもうまい具合にチョーカーでかくしているので見えず確認ができないでいる。  それとは別に、成さんはすごい形相で睨んでくる。怖い……。  これ見よがしに言う時雨様はなんだか嬉しそうにいうので、僕は冷めたことを言う。 「僕が成さんを招きいれて既成事実を築かせたらどうするんですか?」 「梓馬は私の事が大好きだからね、そんな事はしないって信じてる」  みんな口々に『甘々』だと言いながら不貞腐れたり、目を輝かせたり、不敵に笑ったりと自由きまま。  僕はといえば、平常心でいられなかった。  どうせ僕は時雨様が好きですよ。でも一緒にはいられないから……って心に自制をかけて。 「どうでしょうね……僕はもう時雨様の事は……」 「梓馬!」  晴人様がいつの間にか部屋に居て、不思議な顔をしていた。みんなこぞって挨拶をする。 「晴人様おかえりなさいませ」 「梓馬もおかえり。ちょっと顔だしてもらおうか」  晴人様は京さんに『紅茶を持ってくるように』と頼む。そして僕の肩を掴んで『兄さん借りるよ』というと僕を連れ去って行こうとする。。 「へ? 晴人様!? な、なんですか!?」 「い・い・か・ら・来い!」  なんだろう?  どうかなされたのかな? 京さんとは順調だって話だし、京さんとの惚気話でもするのかな? などと思っていたら。 「梓馬らしくない……どうしたの? 梓馬は時雨兄さんの事好きなんだろ?」 「好きですが……」  言い留まってしまう僕。だって、僕はふさわしくなくなってしまった。まぁ、執事だし……それだけでも、ふさわしいとはいえないけど。  晴人様は溜息を吐くと、僕にビシッと指を突きつけこう言うのだ。 「梓馬、らしくないよ。君は兄さんの執事なんだから兄さんの事を悲しませていいわけじゃないだろう?」 「ええっと……僕は専属じゃありません。でも確かに悲しませるのは嫌です。でも……」 「あんぽんたん! お前は馬鹿なのか? あんなに寵愛をうけていたのに、兄さんどうしていいかわからないって言ってた。俺に弱音を吐いたんだ。それぐらい堪えてるってこと。わかる? でももへちまもない!」  僕は言い澱んだけれど、仕方なく事情を説明した。  その話をして聞いてくれる晴人様じゃないけど、それでも晴人様は負けじと『兄さんが可哀想だから抱かれてやれ』というのだ。  困った。 「僕は汚れちゃったから……できないんです。わかって下さい」 「たかが誰かにされたぐらいで俺にだってされただろ? それで穢れたのか?」 「晴人様は榛家のご子息だから……」  僕は若干押され気味だけど、あーだこーだ理由を述べては時雨様を遠ざける。  僕にはもうその価値は無いんだと言い聞かせながら。 「晴人様、お茶の支度整いましたが、梓馬は罪悪感が強いんじゃないですか? 家を無断で抜 け出して、それで、抱かれてしまったからっていう……あず、でも大事なのは心だからな」  ぅぅ……僕はどうしていいかわからなくなってしまった。  だって、穢れてしまったって思ったから、触られる価値なんて無いって思ってた。  僕の大好きな時雨様は大丈夫っていってくれるけど、どこかできっと抱かれたのかと穢れた物を見る目で見るかもしれない。

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