41 / 46

第41話

 夕ご飯も終わり、そろそろ時雨様に呼ばれる頃。  僕は頑張ります! 応援してくれた、二人に感謝をしつつ時を待った。 『コンコン』 「梓馬、いるかい?」  お部屋のドアが鳴ると共に時雨様の甘い声が聞こえる。いつもの夜、一緒に寝ようのお誘いだ。  僕は意を決してドキドキうるさくなる心臓を抑えつつ出る。 「はい!」 ドアを開けると時雨様に抱きつく僕。 「梓馬、今日はなんだか積極的だね」  いつもとは違う僕に喜びを浮かべる時雨様。僕は決めたんだ。ご奉仕すればいいって。 「なんでもないですよ。ただ、抱きつきたかっただけです」  視線をそらせば、成さんが恨めしそうに睨んでいる。当たり前だよね。 「時雨様、お部屋行きませんか?」 「そうだね。あれ? 成どうしたんだい? むくれ顔で」 「時雨様、今日僕頑張ったんですよ。庭の草刈り。そのぅ……僕も寵愛してください!」  成さんも必死だ。どうするんだろう?  握られてる手を『ッギュ』とすると、時雨様も負けじと『ッギュ』と握り返されて幸せな気持ちになる。 「それに僕、時雨様は好き嫌いしてるだけだと思います。僕だって美味しいと思いますよ? 時雨様の期待を裏切らないですよ! 梓馬さんみたく」  ズキッ!  虫のいい話しだったかな? なんてちょっと思ってたけど、折角晴人様や京さんが元気づけてくれたんだからしっかりしなきゃと思う。 「梓馬は私の特別だからね。梓馬行こうか」 『特別』という響きがとてもすごく救われる。僕の大切な人。大事にしなくちゃ。 「あ、成さん、ごめんなさい」 「バカ! お前なんてどっか行ってればよかったのにずっと!」 「こら、成そんな事言ってはだめだろう?」 「時雨様も時雨様です! 一回仕事を放棄した人間を再雇用するなんて!」 『やれやれ』と時雨様はいうけれども、成さんとは仲良くしたいんだ。だって、同じ時雨様が好きな者同士なのだから。  って無理だよね。僕も、時雨様が成さんを本当に抱いてしまったら心が崩れちゃうもん。 「じゃぁね、成」  軽く頭を撫でて、部屋へ向かおうとする時雨様に、必死に抱きつく成さん。  あああ……。 「離れて、邪魔しないでくれるかな? 梓馬との蜜月を」  ぶるりと身を震わせ成さんは離れると、そのまま、悔しそうに僕を睨む。  僕はなんとも言えない気持ちになってしまったけれど、時雨様の意見は絶対だから。  いそいそとお部屋の中に入ってしまった。

ともだちにシェアしよう!