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17.神の素顔

 コウガミが神の手料理絶賛するから、超絶羨ましくなりつつ、もっともっとと聞き出す。  てか風呂で一緒になることある、なんつうから!  マジかーーーっ!! なにソレどんな天国? とか興奮しつつ、身体の洗い方とか、浴槽ん中で足のマッサージしてるとか、色々聞きだしてさらに興奮、もっと聞かせろとどんどん突っ込む。  徐々に苦笑気味に言葉少なくなってくコウガミを放置で、ゲットしたての情報からピンク気味の妄想に発展してく郁也は、いつ鼻血出てもおかしくないくらい興奮しまくってた。  そんな中、一年二人を引き連れて、神が戻ってきたわけだが、肩揺らして笑ってるコウガミを見て驚いたような顔になりつつ、小休止を宣言した。  加賀谷さんの眉間の縦皺消えて、二人もホッとした顔してて、水飲んだりストレッチしたりコウガミの調子聞いたり、肩叩いたりしながら郁也にも声かけてくる。 「いきなり二人で放置って不安だったろ」  つったのは背の低い方。  もう一人がコウガミの肩を叩きながら 「こいつプチ加賀谷とか言われてるのに、笑ってるからビックリした」  なんて言うから、郁也の方がビックリした。  え、コウガミそんな神々しくないのになんで? とか素で不思議で。したら加賀谷さんが水のボトルの蓋閉じながら 「なんだそれは」  とか眉寄せて言ったから、超かわいい~~~ッとトキメキつつ、郁也もニヘラと笑ってる。 「まあ……ありがとな」  コウガミもニヤニヤしながら言ってきたから 「うん、ああ」  とか、適当に返した。だってアタマん中超忙しいんだって! (そっかーシモベとしてー……とか考えると、やっぱ寮に入るべきだよな? 呼ばれたらすぐ行きます! てか! いやいや呼ばれなくても常におそばにっ! て感じでやってかねーとなんじゃ? だよねだよねシモベってそうじゃねーと!)  なんて考えてたわけだが、二人は安心したんだな、とか思ったらしい。なんだか和やかな雰囲気になりつつ、コウガミの痛みは引いたみてーなんで、んじゃ帰るか~ってなったんだけど。 「まだ無理しない方がイイだろう」  加賀谷さんが言って、そんで、なぜか、つうか、やっぱ、つうか……帰りのチャリ、後ろにはコウガミが乗ってる。  てか後ろに男一人乗っけてると、さすがに片手運転できねー! すぐそこに神いるのに、しかもゆっくりペースで二人とかコッチとかにちょいちょい目線くれてる感じとか超レアなのに撮れねえ!  めちゃジレンマ包まれつつ、しょうがなく脳内の神フォルダに映像残しとこうと、必死に背中を見つめてた。 「悪いな。どうせなら女の子乗っけたいよな」  なんてコウガミは言って、その後も「おまえ面白えな」とかなんとか言ってる。 (ちっげーよ男とか女とかじゃねーんだよ! むしろ後ろに乗ってんの加賀谷さんだったら至福なんだよっ!)  とか……言うと気が散って神映像記憶しそこなうかも、なんで「なんもー」とか「おっけー」とか上の空で言ってたけど、コイツとは仲良くするって決めたんだった、とかハッとしたり、マジでアタマん中、かなり忙しかった。  学校に戻ったときには、いつもの終了時間よりかなり遅くなってたけど、陸上部はみんな待ってたみたいで。  加賀谷さんが報告して、「そういう時は無茶するな!」とか怒られながらコウガミは医務室へ直行。 「世話かけたな」 「おまえがチャリで行ってて助かったよ」 「ありがとな」  なんて、先輩とか声かけてくれたりして、コーチも「今日は助かった」なんつってくれて肩ポンポンしてくれて (そっか! こういう関係作ればコウガミに頼らなくてもレア情報ゲットできんじゃね? イイじゃんイイじゃん結果オーライじゃ~~~ん)  とかってテンション上がってく。 (こんなノリで行ったら、加賀谷さんのシモベポジション徐々にゲットできんじゃね? そうすると~、やっぱ寮に入るべきかぁ)  なんて考えてウキウキしてきつつ、そのまんまみんなと一緒に寮まで行った。陸上部って、ほとんど全員寮生なんだよな。  みなさん部屋に戻って風呂とか向かう中、神に動画奉納するために玄関トコで待ってたら、加賀谷さんとコーチが一緒に来た。 「君、コウガミも撮ってくれたんだろ。いつも食事の後に君の動画見てるんだけど、時間あるなら今日は一緒にどうかな」  なんつってくれたりして!  おお加賀谷さんのビックリ顔、神がかってカワイイ! 「……そんなことは聞いてません」 「おまえが彼に言われて気づいたって言ったんじゃないか。どんな気づきがあったのか、俺も聞きたいんだよ。どうかな、戻るまで待っててくれるかな」  なんつったから当然「喜んで!」つった! そりゃそうでしょう! だって神と一緒の時間が長引くんだからさ! 「ありがとう。じゃあ後で」  つってコーチは玄関から出てってったんだけど。 「あれ? てかコーチって寮にいないんすか」 「すぐ近くに住んでる。家で食事してからまた来るんだ」 (そっか! 寮に入れなくても近くにアパート借りるとかアリか!)  とか考え進むアタマの片隅に、ちょい()ぎる『食事の後』のひとこと。つまり寮生じゃねえからメシとかねえわけで、腹減るかなあ、なんて浮かんだモノは (……いやっ!)  すぐ打ち消す。  神を礼賛する時間のためなら俺、たとえ餓死しそうになってもギリまで耐えますっ!  とか覚悟して拳握りしめる。 「待ってろ」  いきなり加賀谷さんの声がしたと思ったら、返事する前にどっか行っちゃった。階段スルーして一階の奥の方に。てか素早い。すぐに姿が消える。てか部屋は二階だよな? どこ行ったんだろ。  でも……追っかけていきたいけど、でも加賀谷さん待ってろって言ったし、寮の中分かんねえし、ウロウロして迷子になってはぐれたら永遠に逢えないかもだし……うん、待ってる方がイイのかな。ンでも同じ屋根の下に神がいるのに、玄関前のホールで一人って。 (……てかもし、このまんま放置されたら……)  うぐぐ……と泣きそうな気分になる (いやっ! だったら208の前に行けば! いずれ部屋で寝るんだし!!)  再度拳握りしめてたら、声がかかった。 「おお~郁也クンなにしてんの」  とかって奥沢さんとか声かけてくれて、ハッとした。  そうだよ! 寮生しか知らないレア情報ゲットのチャンスじゃん! 「あのっ! ちょっと聞きたいんですけど!」  なんつって話聞いたら、なんと奥沢さんは神の隣の部屋だって!  マジかーーーーーッ!!  コレ聞きたいこと山ほどな世界じゃんっ!!   てな感じで前のめり気味に色々聞いてたら、他の寮生のひとたちも集まってきて、なんだか盛り上がってしまってた。しばらくして戻って来た加賀谷さんが眉寄せ 「おまえら……」  とか呟いてるのに、いち早く気づいた郁也のテンションは一気に上がった。 「えっ加賀谷さん……っ!!」  その手にあるのって、まさか……っ!?  ホッカホカの親子丼的なモンとみそ汁と漬け物の載ったトレーが! 神の御手にっ…………!! 「そ、それって……もしかして……!!」  さっきコウガミと喋ってて羨ましくてたまんなかった神の手料理!?  それを……それを今、ワンチャン作ってくれた……!?  そんだけで涙モンなのに、さらに神は睨むみたいに…………言った……!! 「俺の部屋に行け」  キターーーーーーッ!! 来たコレっ! なんつう……なんつうぅぅぅぅっ……これって……!  部屋で! 二人で! 二人っきりで!  メシ・タァーーーイムッ!! キッタァァァァーーーーーッ!! 「食堂は席が決まっている。俺の部屋で食ってろ」  あ~~~……俺一人で食うんすか……いやっ!  手料理ってだけで、もうサイコーっす!! 贅沢は言いませんっ!! 「もうメシの時間だ、なにしてる?」  神は周りに集まった人たち見ながら、めちゃ不機嫌な声出してる。けど (そんなのゼンゼンだいじょぶな超絶感動!) 「いやあ、郁也くんイジっ……喋ってると楽しくてさ。な、みんな?」 「意味不明だけど」 「いじり甲斐あるなコイツ」 「おう、ここまでイってると面白い」  などという周りの声は、絶賛感激中の郁也の耳には入らない。 「分かりましたっ!! 部屋で堪能させてもらいますっ!!」  しっかりトレーを押し戴いて、そろりそろりと208へ向かう郁也の後ろ姿を、そこらにいた全員が生ぬるい笑みで見送り、次いで加賀谷へ意味深な笑顔を向けたのだった。

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