5 / 10
第5話
「あ…んっ、待って、ご飯…いらない?」
「待てない…。飯は後で食うよ。…先に凪を食べたい…」
「ん…翔太…」
僕の上に翔太が被さり、抱き合ってキスをする。角度を変えて舌を絡め合わせていると、突然翔太が勢いよく身体を起こした。
「あ!そうだっ」
「…どうしたの?」
「ふふん、凪、ちょっと待ってろ」
翔太がニコニコしながらソファーを飛び降り、鞄と一緒に置いていた紙袋から何かを取り出した。
「見てこれ。今日の飲み会のビンゴの景品。凪、絶対似合うから着けて?」
「え?」
翔太が目の前に掲げたものを見て、僕は顔を引きつらせる。
それは、黒い猫耳がついた被り物に黒い尻尾が生えたパンツ。それだけじゃなくお揃いの猫の手まである。
ーーえ?なにそれ?コスプレってやつ?25のおっさんが?それ着けんの?
僕はソファーの上に起き上がると、膝を抱えてそっぽを向いた。
「やだ。僕がそんなの着けても、気持ち悪いだけだし。絶対やだ」
「えぇ〜…。凪が着けたら可愛いと思って、すっげー楽しみにしてたのに…」
「……じゃあ、先に翔太が着けてみてよ」
「俺っ?俺が着けたら完璧変態じゃん…っ。くっ…、でも、俺がしたら凪もするんだな?…わかった」
翔太が猫耳の被り物を手に取って、頭に被る。
うん。ただの酔っ払いのおじさんだ。
「それだけじゃダメだよ。ほら、スーツも脱いでパンツ履いてよ」
「えっ!マジか…」
翔太は、手に持ったパンツを見つめて考え込んでいたけど、よっぽど僕に着けさせたいのか、一気に服を脱ぎ捨てた。素早くパンツを履いた翔太が僕の前に立つ。
「ふはっ、あははっ!翔太…結構似合ってるよっ」
僕は、翔太を見てお腹を抱えて笑った。
うん、まさしく変態おじさんだ。到底、猫になんて見えない。
でも、猫ではないけど、 翔太の細身なのに筋肉のついた浅黒い身体は、しなやかな黒豹を思わせた。
「凪、俺を舐めてると後悔するぞ?」
そう言って、ニヤリと笑う翔太に、僕は再び顔を引きつらせた。
ともだちにシェアしよう!