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第5話

「あ…んっ、待って、ご飯…いらない?」 「待てない…。飯は後で食うよ。…先に凪を食べたい…」 「ん…翔太…」 僕の上に翔太が被さり、抱き合ってキスをする。角度を変えて舌を絡め合わせていると、突然翔太が勢いよく身体を起こした。 「あ!そうだっ」 「…どうしたの?」 「ふふん、凪、ちょっと待ってろ」 翔太がニコニコしながらソファーを飛び降り、鞄と一緒に置いていた紙袋から何かを取り出した。 「見てこれ。今日の飲み会のビンゴの景品。凪、絶対似合うから着けて?」 「え?」 翔太が目の前に掲げたものを見て、僕は顔を引きつらせる。 それは、黒い猫耳がついた被り物に黒い尻尾が生えたパンツ。それだけじゃなくお揃いの猫の手まである。 ーーえ?なにそれ?コスプレってやつ?25のおっさんが?それ着けんの? 僕はソファーの上に起き上がると、膝を抱えてそっぽを向いた。 「やだ。僕がそんなの着けても、気持ち悪いだけだし。絶対やだ」 「えぇ〜…。凪が着けたら可愛いと思って、すっげー楽しみにしてたのに…」 「……じゃあ、先に翔太が着けてみてよ」 「俺っ?俺が着けたら完璧変態じゃん…っ。くっ…、でも、俺がしたら凪もするんだな?…わかった」 翔太が猫耳の被り物を手に取って、頭に被る。 うん。ただの酔っ払いのおじさんだ。 「それだけじゃダメだよ。ほら、スーツも脱いでパンツ履いてよ」 「えっ!マジか…」 翔太は、手に持ったパンツを見つめて考え込んでいたけど、よっぽど僕に着けさせたいのか、一気に服を脱ぎ捨てた。素早くパンツを履いた翔太が僕の前に立つ。 「ふはっ、あははっ!翔太…結構似合ってるよっ」 僕は、翔太を見てお腹を抱えて笑った。 うん、まさしく変態おじさんだ。到底、猫になんて見えない。 でも、猫ではないけど、 翔太の細身なのに筋肉のついた浅黒い身体は、しなやかな黒豹を思わせた。 「凪、俺を舐めてると後悔するぞ?」 そう言って、ニヤリと笑う翔太に、僕は再び顔を引きつらせた。

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