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第2話

右前腕部も壁に付けると、翔との距離がグッと近付いた。小っ恥ずかしくなって思わず目を泳がせた。 「…」 「あっそ、言わないなら実行させてもらうけど?」 「ど、どうせ出来ないんだろ…」 「どうだろうな?俺が本当に出来ないか、試してみるか?」 翔はヘタレだから出来っこない。でも、今日の翔は少し違う。やる気ないいつも目じゃなくて、無駄に凛々しい目をしてる。 「やれるもんなら…んむ…ッ…」 黙らせるようにカプッと翔の唇に口を覆われた後、チュッと音を立てて軽く唇が触れた。リップ音を立てながら何度か啄まれると、熱くて少しザラザラした舌に唇を舐められた。 「…春馬…口、開いて…」 興奮してるのか、翔の息が荒い。それに誘われるように俺の息も荒くなる。本気モードの翔は悔しいけどカッコよくて、もう少し見ていたいと思いながらゆっくり目を閉じて、うっすらと唇を開いた。その隙間から舌が差し込まれる。 (舌…熱っ…) 「…ンッ…んぅ…ッ…」  翔の背中に腕を回して、紺のセーターを握り込んで皺を作る。舌が歯列をなぞったり、上顎を撫でたりしながら口内を荒らす。ようやく大人しくなったと思った側から舌を絡め取られた。俺も応えようと絡め返した。交換でもするように唾液が行き来する。口元から漏れる水音は卑猥で、俺を興奮させた。 (気持ちいい…もっと…) 角度を変えながら何度も繰り返す。顔に掛かる翔の吐息すらも愛おしくて、胸が苦しくなる。俺の息が上がった頃、唇がゆっくり離れて、絡まった舌が解れて糸を引いた。名残惜しくなって、唇で舌を捕まえてチュッと吸った。 「…ッ…ハァ………キスは、こんなに激しく俺が好きだと言ってくれるのに、春馬は言ってくれないのか?…」 「…はぁ、は…ぁ…ッ………それとこれとは、違うだろ?…」 「顔もトロトロだし、泣いてるし…」 「な、泣いてないッ!!」 「目尻に涙溜まってるけど?」 さっきまで俺の口内を荒らしまくってた舌が、生理的に溜まった涙を優しく掬った。その後、チュッと瞼にキスをされた。 「や、止めい!…なに教室で甘々な空気作ってんだよ、お前は!!」 「春馬もまんざらでもなかったろ?トロ顔してたのはどいつだ。」 「うっせ!」 「で?決めたわけ?」 「は?」 キスに逆上せてすっかり忘れていた。俺は今、絶対絶命のピンチ状態にある事を…

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