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第7話

「さっきイったばっかりだから…無理だ…」 「そんなことない。また硬くなってきてる。ほら」  三森の手が自分の手に軽く重ねられ、ゆっくりと上下に動かされる。人生で初めて感じるひどい緊張と羞恥、それを上回る期待に満ちた快感が視界をぐにゃりと歪める。 「…み…もりっ…やめっ…」  自分に聞こえた声は、思うよりずっと上擦っていて、濡れていて、乞うようで、恥ずかしさに一気に体の熱が表面へと吹き出した。  死ぬ気で気持ちを隠し通してきたつもりだったのに、ひとり家で酒を飲みながら三森のことを考え、こんなことをしていることさえ見透かされていた。  だって好きなのだから、仕方ない。叶わぬ想いなのだから、妄想くらいは許して欲しい。  キスしたい、触れ合いたい、繋がりたい。好きだという気持ちはいつの間にか自然と体へと繋がる。今以上に近づきたい、それはどうしようもできない欲望だ。閉じ込めておきたいのに、次々と湧き溢れ出る。  でもこんな形では想像していなかったはずだ。友達相手に性的に興奮してるなんて、知られたくなかったはずだ。じゃあどんな風になりたかった?答えはない。ただ好き、それだけだった。  三森が言う通り、どうしようもない生き物だ。ふたりで過ごす時間を大切に思ったり、仕事や人生へのモチベーションを高めあったりすることが好意へのきっかけだったはずのに、どうしようもなく欲望を硬くさせているのだから。  視姦されていることで羞恥にまみれながら、さっきとはまた違う方向に湧き上がる興奮に体を震わせている。もう一度触れて欲しくて、焦らされるようにもどかしくて、痛みを覚えるほどに握り込んだ。期待に応えて全てを曝け出せば、もっと近づけるのではないかという下心があった。三森がごくりと喉を鳴らす音をかすかに聞いた。 「はっ…あっ…っ…」  名前を呼びそうになって、ぎりぎりで留まる。促されなくても、手は勝手に最終点へ向かう動きに変わっていた。二度目に昇り詰める感じは急速に迫り上がってきて、追い詰める。体の芯をびくりと刺激が貫き、震えながら自分の手の中に勢いよく白濁を放った。 「久しぶりになんか、胸が高鳴った」  嬉しそうにそう言って、三森はご褒美みたいに軽いキスをくれた。さっき三森のものを咥えた唇に口をつけてくれるのが、優しさのような気がした。 「どっちで想像してた?突っ込むのと掘られるの」  正直に言えと視線で促すように、まっすぐに見据えられる。どくんどくんどくんと胸は大きな音を立て緊張を伝えてくるのをやめない。怖いという気持ちは消えないのに、下半身はまだずくずくと脈打っていて、とにかく手を伸ばせと自分をけしかける。 「…挿れる方………でも、三森になら…俺、どう…されてもいい……」  震えながら、声を絞り出した。静かな水面が急に揺れるみたいに、三森は笑った。楽しくて仕方ないと言うように肩を震わせていた。 「ごめん、無理。抜き合いはできても男とヤるのは俺には無理だわ」  予想していた答えとはいえ、息苦しくて、一言も発することができない。呼吸の仕方を忘れてしまったかのように胸が苦しい。ティッシュを取る手がまた震え、ゴミ箱に捨てていいのかわからず手に握ったまま行き場をなくしてしまった。 「それに俺、最初っからお前のこと大っ嫌いなんだ。就職活動の時、面接の待合室で出会った時からずっと今まで」  三森の言葉の意味がわからなかった。日本語としては理解できても、頭が頑に受け入れるのを拒否し、思考をすぐに空白に戻してしまう。  嫌い?最初から?ずっと?

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